1992 Fiscal Year Annual Research Report
痴呆性老人のための音楽教育法・音楽療法に関する基礎的研究
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04680312
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
手塚 実 島根大学, 教育学部, 助教授 (50108784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
卜田 隆嗣 島根大学, 教育学部, 助教授 (40202113)
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Keywords | 痴呆性老人 / 音楽療法 / 公認音楽療法士制度 / 音楽教育の見直し / 動きと音楽 / 回想法的音楽療法 / リズム療法 / 集団音楽療法と個人療法 |
Research Abstract |
今年度は、釜瀬クリニック(松江市)で定期的に臨床実験をおこないながら、臨床現場に学生を参加させ、体験に基づいた研究発表の場を学内に設けた。また、この地域での音楽療法に関する情報交換を円滑にするため、山陰音楽療法研究会を結成し、資料収集・情報交換のため、日本臨床心理研究所(山梨)、東京音楽療法協会などを訪問した。その他、医療関係者などに対する音楽療法についてのアンケート調査を実施した。これらの作業を通して得られた、音楽療法を取り巻く現状、および将来展望に関する新たな知見は以下の4点である。 1.医師が行っている音楽療法の多くは、概して医者中心となりがちで、患者の立場を無視していることが多い。患者中心主義に立って、たとえば患者の動きに対応して音楽を生み出すといったやり方が、特に音楽の専門家が関与できる領域であると思われる。 2.「音楽療法士」の資格がないため、積極的に音楽療法に取り組んでいる介護スタッフが病院内で一段低くみられる傾向が強い。スタッフの人間関係が音楽療法の円滑な実施を阻んでいる側面が多々ある。 3.老人対象ではないが、地元の養護学校教員が「うちの子どもたちは本物の音楽をわかっていないから先生に来ていただいても・・・」と語っていることに代表されるように、医師・看護婦など病院のスタッフが、「音楽」をかなり限定的に捉える傾向にあり、それも音楽療法の展開を妨げている要因である。大学の教員養成は、この考え方を改める方向を目指す必要があると思われる。 4.現行の音楽療法のほとんどは集団療法であり、この方法は積極的でなかった人を巻き込んでいけるというメリットがある反面、個人差を無視せざるをえないというデメリットもある。方法論的研究をさらに深める必要がある。
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