1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04801003
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大形 徹 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (60152063)
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Keywords | 仙人 / 石室 / 古墳 / 不老不死 / 鬼 / 神 / 霊魂 / 尸解仙 |
Research Abstract |
中国の仙人説は山東省の横穴式石室と関連するとされる。石室内には仙人の絵が描かれ、古仙人の「羨門高」は「羨道」の入り口である「羨門」をその名とする。本年度は死生観に関する基本的な考え方をつかむため、日本の古墳に関して考察をくわえた。九月より天理大学の古代史特別講座を聴講し、「埼玉古墳群(日野宏)」、「南朝文化と古墳〜大陸との交渉(桑原久男)」、「朝鮮半島の古墳(竹谷俊夫)」、「横穴式石室の普及〜変わる葬制〜(山内紀嗣)」、「殯とは何か〜古代の死生観(川村邦光)」などの話を聴講した。また大阪府立弥生文化博物館で開催されている「激動の三世紀-古墳誕生の謎」を見学し、考古学的遺物を実見し、知見をひろめた。また奈良の石塚古墳・箸墓古墳・景行陵・崇神陵・東殿塚古墳・西殿塚古墳・茶臼山古墳等々の古墳を見学調査し、さらに応神陵や仁徳陵・ニサンザイ古墳等々の大阪の古墳も見学調査し、十一月のはじめには埼玉古墳群を見学調査した。こういった古墳に見られる葬制およびその基礎となる死生観は中国を中心として朝鮮・日本などの東アジア一体に大きく影響をあたえている。日本の古墳の葬制およびその遺物のなかから、古代中国の死生観をさぐりうるのではないかという感触をえた。七月二十日刊行の拙著『不老不死』(講談社現代新書)のなかで、古代の死生観と仙説とのかかわりについての概要をのべたが内容的に満足できない。八月末に「中国古代の葬制と仙説とのかかわりについて」と題する論考を脱稿、大阪大学中国哲学研究室篇『中国研究集刊』に発表する(三月ごろ刊行予定)。このなかでは馬王堆のミイラなどにうかがえる遺体の保存技術について考察した。そのことと「仙人」や「鬼」さらに「神」などの本質である「霊魂」とのかかわりについて考察をくわえた。これにより尸解仙の成立にかんしてはある程度のみとおしがたてられたが、さらに考察をふかめる必要がある。
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