1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04801049
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
福田 景道 島根大学, 教育学部, 助教授 (20181266)
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Keywords | 歴史物語 / 鏡物 / 皇位継承 / 枠物語 / 場の物語 / 世継 / 歴史叙述 / 秋津島物語 |
Research Abstract |
本年度は,まず歴史物語の範囲の画定を試み,次に,歴史叙述の対象とされる期間が2作品以上において重複する実態(『栄花物語』続編と『今鏡』,『増鏡』と『五代帝王物語』など)に注目して,歴史物語全作品の系譜(時代的連鎖の実状)を次のように把捉した。 まず,歴史物語の中枢に,皇位継承史(「世継」)を機軸にして存立する特異な作品群が見いだせる。この皇位が持続的に継承されたために,『栄花物語』と『大鏡』には続編が生じ,『六代勝事記』に続いて『五代帝王物語』が著作されたと考えてよい。この段階では,仮名書き日本通史の複数の系列が重層的に存在し,同類の作品(『唐鏡』『秋津島物語』)や類縁作品(『宝物集』や『無名草子』)をも多出させたのであろう。すなわち『栄花』『大鏡』などの純正「世継」を中心に放射状に広がるのが,当初の歴史物語作品群の実態であった。 このような歴史物語の盛行と多様化を受けて,再び皇位継承史を重視し,歴史物語史を再編成したのが『増鏡』である。以後,『秋津島物語』-『水鏡』-『大鏡』-『今鏡』-『月の行方』-『増鏡』-『池の藻屑』と線状に連なる通史の系列が一般化する。このうち『秋津島物語』は『水鏡』以下と対象期間を重複させる大規模な作品であった可能性もあるが,現存本は完結性をもち,通史の劈頭に位置付けるにふさわしい(大規模な作品のうち,通史完成に有益な部分だけが,歴史物語の系譜の再編成に伴って改作されて残存したとも考えられる)。 また,上記諸作品の成立が西暦1200年前後と14世紀中葉という転換期に集中する事実も注目される。多く宮廷社会の安定を描きながら,歴史物語は変転する現実と無縁ではなかったのである。同時に,太古から続く聖なる場での歴史語りを枠組みにもつ場合がそれらの大半を占めており,伝統を固守する一面も無視できない。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 福田景道: "歴史物語の範囲と系列(上)" 島根大学教育学部紀要(人文・社会科学編). 27巻1号. 25-34 (1993)
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[Publications] 福田景道: "『秋津島物語』の輪郭-「歴史物語の範囲と系列」補説-" 国語教育論叢(島根大学教育学部国文学会). 4号. 49-58 (1994)
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[Publications] 福田景道: "歴史物語の範囲と系列(下)" 島根大学教育学部紀要(人文・社会科学編). 27巻2号. 17-28 (1994)