1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04801057
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 和彦 京都大学, 文学部, 助教授 (90183699)
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Keywords | ヒッタイト語 / パラー語 / ルウィ語 / 象形文字ルウィ語 / リュキア語 / アナトリア諸語 / 比較言語学 / 楔形文書 |
Research Abstract |
1.すでに作成してあるヒッタイト語楔形文書の時期別分類法を基礎にして、本年度にあらたに購入した楔形文字テキストが古期、中期、後期ヒッタイトのどの時期に属するものかを決定した。 2.うえの1の基礎的な作業に基づいて、古期ヒッタイト語の粘土版に現れる3人称複数過去の能動態動詞の用例を包括的に収集した。 3.ヒッタイト語以外のアナトリアの諸言語、すなわち、パラー語、ルウィ語、象形文字ルウィ語、リュキア語のテキストに記録されている動詞の形式を認定し、それらに対して記述言語学的な分析を施した。そして、確実に3人称複数過去形と認められる形式を整理した。 4.うえで収集、整理した、アナトリア諸語の3人称複数過去の動詞形式に対して、比較言語学的な観点から考察を試み、当該動詞形式の先史、およびアナトリア祖語にどのような祖形を建てるのが妥当であるかを推定した。 5.4の分析の結果、次の知見が引き出された。 (1)後期アナトリア祖語には3人称複数過去のmi-動詞語尾として、*-an(<*-ant)だけではなく、hi-動詞から広がった*-erも存在していた。 (2)ヒッタイト語では、その先史において、*-erをmi-動詞にも、hi-動詞にも一般化した。 (3)他方、他のアナトリア諸語では、*-anという語尾が中動態の語尾*-antaのヴァリアントとして再解釈された結果、*-antaが3人称複数過去をマークする唯一の語尾として一般化された。
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