1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04801057
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
吉田 和彦 京都大学, 文学部, 助教授 (90183699)
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Keywords | 印欧アナトリア語派 / 楔形文字ルウィ語 / 象形文字ルウィ語 / リュキア語 / ルウィ系諸言語 / 中動態 / 能動態 / 語尾 |
Research Abstract |
印欧アナトリア語派のうちのルウィ系諸言語(楔形文字ルウィ語、象形文字ルウィ語、リュキア語)においては、動詞の3人称の中動態過去形が記録に残っていない。これは決して偶然ではなく、言語学的な要因によるのである。 3人称単数過去形の場合、ルウィ祖語の段階で語末の歯茎音が脱落したために、mi-動詞の過去形は独自の語尾を欠いていた。この機能的な曖昧さを取り除くために、すなわち3人称単数過去形であることをより明瞭に示すために、中動態の語尾、*-taあるいは*-daがmi-動詞に付与されるようになった。この新しい語尾に含まれる歯茎音が無声か有声かは、対応する現在形の語尾によって決定される。mi-動詞に起こったこの形態変化と類似した変化が、hi-動詞にも生じた。ヒッタイト語内部の歴史から、hi-動詞の3人称単数過去形はアナトリア祖語において*-sという語尾で特徴づけられていたことが分かる。この語尾*-sはその機能的な位置が不明瞭であるために、対応する中動態の語尾のうちより無標の*-taという語尾に取って代わられた。 何故、ルウィ系諸言語において3人称単数のmi-動詞語尾の歯茎音が現在形と過去形の間で一致しているのか、また、何故、語尾の歯茎音の有声と無声の対立がhi-動詞にはみられないのかという問題は、うえの分析、すなわち、本来の能動態語尾が中動態語尾に取って代わられたと解釈することによって、最も自然に説明することができる。
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[Publications] Kazuhiko Yoshida: "Notes on the Prehistory of Preterite Verbal Endings in Anatolian" Historische Sprachforschung. 106. 26-35 (1993)
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[Publications] Kazuhiko Yoshida: "Palatalization in Old Irish Deponent and Passive Endings" Studia Phonologica. 27. 1-7 (1993)