1992 Fiscal Year Annual Research Report
ギリシア・ラテン文学ーなかんずくギリシア小説ーとその後世への影響の民俗学的研究
Project/Area Number |
04801058
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
下田 立行 信州大学, 人文学部, 助教授 (90240788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 明 信州大学, 人文学部, 教授 (00111782)
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Keywords | ギリシア喜劇断片 / ギリシア悲劇断片 / ギリシアの小説 / ギリシアの民俗 / ギリシアの民間宗教 |
Research Abstract |
目下、研究課題に直接関わるものとしては、ギリシア小説の中でも最も巨大で完成度も高いとされるヘーリオドーロスの『アイティオピカ(エティオピア物語)』を読むという作業を行っている。ギリシア語による綿密な読みが研究の基礎となることを思えば、この作業は決してなおざりにできないものであるが、紀元後四世紀の作品であるため全盛期のアッティカ文献とは異なる面も多く難解であり、かつ、注釈書が存在せず、二、三の翻訳(英語と仏語)も部分的に解釈の相違が見られることが多いので、単に読んでいくだけでも、様々な資料を参照することが必要とされる。従って、なかなか本来の研究目的であるギリシア小説に見られる民俗的要素の抽出・分析等は余りはかどっていない、というのが現状である。しかし、人文系の学問はその要素を部分的に切り離して考察しにくい面があり、膨大な知識の蓄積が必要であることを思えばやむをえないことであろう。他方、研究の背景となる古代ギリシアの文物一般に関わる研究の一環として、これはで特に日本ではあまり研究の進んでいなかったギリシアの悲劇・喜劇の断片の解説・翻訳を進めつつある。悲劇断片については、主なものが研究代表者を含む数名の研究者による翻訳によって書店より刊行されつつあり、世界的にも珍しい画期的な業績として評価されている。また、研究代表者は喜劇断片の翻訳・解題等を平成五年度以降の信州大学人文学部紀要に連続掲載していく予定である。また、研究課題に関する研究成果は、小冊子として平成五年度中に刊行するが、諸搬の事情から中間報告的なものにならざるをえないと考えている。もう一点、前十世紀前後のギリシア社会・文化の研究書として著名なフハンリー『オデュッセウスの世界』の翻訳を平成五〜六年中に刊行する予定である。
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