1992 Fiscal Year Annual Research Report
植物-微生物の共生系における溶原性ファージの機能に関する研究
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04804056
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
内海 敏樹 鹿児島大学, 理学部, 助手 (20193881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 美紀子 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (00107856)
東 四郎 鹿児島大学, 理学部, 教授 (60041216)
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Keywords | 根粒菌 / 溶原性ファージ / インテグレーション / 染色体 / ベクター / attP / attB / 特異的組換え |
Research Abstract |
クローバ根粒菌(Rhizobium leguminosarum biovar trifolii)4S株を宿主とする溶原性ファージφUは、ファージDNA上のattp部位と宿主菌染色体上のattB部位とで特異的組換えを起こし、ファージDNAが宿主染色体にインテグレートすることで溶原化する。この性質を利用して、任意の遺伝子を安定して根粒菌染色体にインテグレートし得るようなベクタープラスミドの構築を試みた。 ファージφUのゲノムDNAのEcoRI6.0kb断片上にattpが存在することを確認し、この断片をプラスミドpSUP202のEcoRI部位にクローニングして組換えプラスミドpCI6(14kb,Mob,Tc^r,Amp^r)を得た。pCI6は大腸菌より根粒菌へ接合伝達が可能であるが、根粒菌内では自己複製できない。pCI6を大腸菌より根粒菌へ接合伝達し、テトラサイクリン耐性(Tc^r)で選択することにより、pCI6上のattpと根粒菌染色体上のattBで、特異的組換えによりpCI6全体が染色体にインテグレートした菌株を選択することにした。クローバ根粒菌4S株を受容菌としてpCI6を接合伝達した場合には、4.4×10^<-3>の高頻度でTc^r株が出現した。サザン法による解析にて、得られたTC^r株では、菌染色体にpCI6がインテグレートしており、その位置は、本来ファージφUが溶原化する位置と同一であることが明らかとなった。 次に、他の根粒菌株及びAgrobacterium菌株の染色体へのpCI6のインテグレートについて検討した。エンドウ菌株の1株であるK5株を受容菌として場合のみ、10^<-4>の頻度でTc^r株が出現した。サザン法による解析の結果、pCI6は、K5株の染色体にインテグレートすることが可能であり、インテグレートする位置の制限酵素地図は、クローバ菌4S株と類似していることが明らかとなった。 以上のように、溶原性ファージのDNA断片を利用して、クローバ根粒菌の染色体に遺伝子をインテグレート可能なベクターを構築するこができた。また、このベクターは、エンドウ菌の染色体にも遺伝子のインテグレートが可能であり、有用なベクターとなり得ることが示唆された。
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