1992 Fiscal Year Annual Research Report
微弱なガンマ線源を利用するアダマール変換型メスバウアー分光法
Project/Area Number |
04805005
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
原田 久將 鳥取大学, 工学部, 助手 (80032275)
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Keywords | メスバウアー分光学 / アダマール変換 / 信号処理 |
Research Abstract |
メスバウアースペクトル測定における微弱な信号に対処するため、信号成分が背景雑音に比べて弱い場合と測定時間が短くてS/N比が小さい場合の両方を同時に含む様な信号強度を表すパラメーターqを定義し、このようなスペクトルをアダマール変換型メスバウアー分光器で測定することをシミュレーションした。ローレンツ型ピークを持ち、各チャンネルにおける計数は、その平方根に等しい標準偏差で平均値のまわりで変動させ、非線形最小自乗法によりメスバウアースペクトルのパラメーターを推定することによりアダマール変換の効果を調べた。計算にはパーソナルコンピューター98noteSX/Tを用いた。 アダマール逆変換して得られたスペクトルのノイズ成分の標準偏差はアダマール変換の次数に比例して減少していることからモデルが正しいことが分かった。推定されたパラメーターの元のパラメーターに対する変位からアダマール変換の効果は信号強度qの小さな場合に明白に現れた。qが大きい場合には単一のスリットで検出される通常の測定方式と比較して大きな効果は認められなかった。従ってアダマール変換の効果は吸収率の小さなスペクトルの場合と測定時間の短い場合に著しいことが判明した。すなわち測定時間の短縮に有効であることが分かった。 つぎにアダマール変換型分光器を製作するための検討をおこなった。他の分光法に使われている巡回行列型アダマールマスクをもった周期的なスリットを連続的に移動させる方法をメスバウアー分光に導入すると、同心円状のスリットの開口部の半径を測定チャンネル毎に変化させるという複雑な操作を必要とする。これを解決するため変換の次数に等しい枚数のスリットをモーターに取り付けチャンネル毎に回転することを試みた。この場合大きな次数を使用できないこと、光学系の軸合わせの精度、回転に必要な時間を無視できないことなどの問題点を残した。
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