1992 Fiscal Year Annual Research Report
雲と降雨の形成に関する実スケール実験と降雨モデルの改善
Project/Area Number |
04805050
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山田 正 中央大学, 理工学部, 教授 (80111665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樫山 和男 中央大学, 理工学部, 講師 (10194721)
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Keywords | 実スケール実験 / 雲の形成過程 / ラウール効果 / 潜熱 |
Research Abstract |
一般に大陽からの短波放射(いわゆる日射)は地面、海洋で暖め、その表面は赤外線の長波放射や熱伝導の形態で水蒸気湿度を持った大気に熱を供給する。この結果、周囲大気との間に密度差と浮力が発生し、この不安定性が引き金となり、上昇流の発生→断熱膨張→気温の低下→水蒸気の凝結→雲の発生→潜熱の発生→浮力の強化が続き、大気不安定を継続させることとなる。このような大気の循環をコントロールした環境の下で再現することを目的として雲と降雨の形成過程の実スケールの実験を行なってきた。実験場としては、現在廃抗になっている直径6m、深さ700mの鉱山の立坑を利用している。立坑内では、大型ファンにより常時2m/sの程度の上昇流が発生しており、上述した大気不安定が模擬されている。研究代表者らは、平成4年度、この立坑を利用して世界で初めて断熱膨張→気温低下→水蒸気の凝結→雲の発生→降雨という自然界での大気循環を観測することに成功した。本年度は3回の実験を実施して、雲の形成に関して温度の鉛直プロファイル、湿度の鉛直プロファイル等の熱力学的データや風速、気圧を測定することができた。これらの実験結果を要約すると以下のようにまとめることができる。 1.雲は過飽和状態にならなくても発生する。これは、いわゆるラウール効果を実際に検証するものである。 2.温度の高度分布は理論的に求まる潜熱を考慮したものとよく一致している。 また、降雨モデルの改善に関して従来から用いられている降雨モデルのパラメタリゼーションを本実験のデータを用いてシュミレーションし新しいパラメータの特定した。このパラメータを用いることによって本実験を数値上で再現することができた。
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[Publications] 山田 正: "鉱山の長大立坑を用いた雲物理実験(その1)" 水文・水資源学会研究発表会要旨集. 76-79 (1992)
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[Publications] 山田 正: "降雨予測と洪水予測" 水文・水資源学会研修会講義集. 109-129 (1992)
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[Publications] 山田 正: "地形性降雨とその解析" 土木学会水工学に関する夏期研修会講義集. A-8. 1-21 (1992)
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[Publications] 山田 正: "雪および氷晶を考慮した冷たい雨の数値シミュレーション" 水文・水資源学会研究発表会要旨集. 80-83 (1992)
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[Publications] 山田 正: "山地流域における降雨の分布特性と降雨の数値シミュレーション" 土木学会水工学論文集. 35. 243-250 (1991)
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[Publications] 山田 正: "洪水ハイドログラフの形成過程と治水対策の効果に関する研究" 水文・水資源学会誌. 23-31 (1992)