1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04805057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高見沢 実 東京大学, 工学部, 助教授 (70188085)
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Keywords | 都市計画 / イギリス / 1990年法 / 「成熟型」と「衰退型」 |
Research Abstract |
「成熟安定型」イギリス都市計画の姿は、1947年都市農村計画法を基礎としながら、1970年代中盤までみることができる。しかし、1970年代中盤以降、国家全体の経済的衰退の中で「成熟安定型」の意味が問い直されることになった。1980年代は、各種の新たな試みが「民活」のかけ声のもとになされた。ある論者は「成熟型」に対して「衰退型」との名称を与え、イギリス都市計画は「衰退型」に移行したと捉える。しかしながら、今回の研究を通して、必ずしもそうした二元論は正当な評価ではないことが明らかになった。「衰退」というなら既にイギリスは20世紀初頭には経済力の面でアメリカに遅れをとり、徐々にその役割を縮少してきた。「成熟」とは、基本的に大巾な成長がない中で、放置しておけば「衰退」に向う状況に対し、経済・産業の構造的変化や政治・行政上の再編成、人々の価値観の変化を適確に捉えながら、スムーズにそうした新たなシステムに移行することのできる、継続的な仕組みの存在といえる。わが国の場合、これまで大巾な経済成長と都市の拡大・成長を経験してきたわけだが、そうした継続的な仕組みが確立されているとは言い難い。 こうした視点で「成熟」を捉え直すとき、イギリス都市計画の近年の動きにはいくつかの特徴が改めて明らかとなる。第一に、国家レベルから県、市レベルに至る計画機関のヒエラルキーは微調整こそあれ基本的には安定している。第二に、新たに試みられた都市開発公社も大きな批判を浴びながら徐々にbetterなコンセンサスを形成しつつ仕組の変更・追加を経て根づき始め、従来の空白部分を埋めつつある。第三に、合意を形成する上での個人・組織の役割が安定しており、NGOの存在も含めて「極端」に偏ることなく、コンセンサスに至るバランス感覚が豊かである。そうした特徴を今後はさらに深く明らかにしてゆきたい。
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