1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04805068
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
三浦 秀士 熊本大学, 工学部, 助教授 (30117254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 新二 熊本大学, 工学部, 助手 (40222781)
本田 忠敏 熊本大学, 工学部, 教授 (80040393)
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Keywords | 金属粉末射出成形 / 焼結合金鋼 / 炭素量制御 / 溶媒抽出 / 機械的性質 / 高性能化 |
Research Abstract |
平成5年度では、前年度で得られた結果を基にして金属粉末射出成形技術による高性能な焼結合金鋼の鋼種拡大を目的に、機械構造用鋼の代表的な組成であるCr-Mo系、Ni-Mo系について、粉末特性の成形、脱バインダおよび焼結の各工程に及ぼす影響を調査検討した。 まずCr-Mo系については、炭素を含有していない合金粉末を用いたため、前年度と同様のH_2とN_2の混合ガスを用いた脱バインダ雰囲気で鉄中に炭素を残存させることは困難であった。しかし、N_2ガスの代わりに浸炭作用のあるCOガスを用いれば、過共析鋼成分から軟鋼成分までの炭素量を広範囲に制御できることがわかった。なお、溶媒抽出後、脱バインダと焼結を同時に行う連続プロセスにより、相対密度95%の高密度な焼結体を得ることができ、また本鋼種の熱処理材は従来の焼結鍛造鋼に匹敵する高強度を示すことがわかった。 次にNi-Mo系では、カーボニル鉄粉(0.9%C)にそれぞれの合金元素粉を添加した混合粉末を用いたが、この場合は、脱バインダ雰囲気としてH_2とN_2混合ガスを用いることで炭素量を容易に調整でき、前年度で確立した本プロセスの有効性を確認した。なお、本系混合粉末を用いた射出成形による焼結体においては、合金元素が十分に拡散すれば通常フェライト相とパーライト相の混合組織となる筈であるが、Ni粉末の凝集に伴う偏析によりマルテンサイト相あるいは残留オーステナイト相が生成し、上記2相と合せた不均質な組織を呈した。しかしながら、とくに強度の向上に寄与するマルテンサイトや残留オーステナイトの出現や、気孔形態も独立微細な球状であることから、本系焼結体は従来の粉末治金法により作製した合金粉焼結体と比較して、良好な機械的性質を示した。このことは、金属粉末射出成形法による高密度焼結材料特有の新しい現象とも考えており、今後の高性能な鉄系焼結材料の設計のための重要な指針を得るためには、さらに従来のプレス成形による低密度材との比較や鋼種を変えての検討などが是非、必要であろう。
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