1992 Fiscal Year Annual Research Report
ラセミ体アミノ酸N-カルボキシ無水物の結晶構造と固相重合性との関連
Project/Area Number |
04805096
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
金澤 等 福島大学, 教育学部, 助教授 (50143128)
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Keywords | 固相重合 / ラセミ体バリンNCA / 結晶構造 |
Research Abstract |
本年度は、ラセミ体バリンN-カルボキシ無水物(NCA)の単結晶の構造決定と、その固相反応性の特徴を検討した。構造解析については、前年度に、ほぼ成功し、本年度は、結晶内の構造の細部をみた。ラセミ体バリンNCAは、L-体とD-体が、それぞれ、別々に水素結合で連なった構造をしていることがわかった。ラセミ体バリンNCAの固相重合の特徴を、溶液重合およびL-体の固相重合と比較した結果、次のような特徴が挙げられた。1)ラセミ体の固相重合の速度は、溶液よりも少し遅い。2)ラセミ体固相重合で得られるポリマーの分子量は、溶液中での生成物よりも大きい。3)生成物の分子形態は、L-バリンNCAの固相重合で得られるポリマーとは異なる。 以上のような結果は、ラセミ体バリンNCAの結晶中での反応は、L-体とD-体の混在の為に、進行が、遅いが、それでも、結晶内の分子配列には、高分子量の生成物を与える要素があると解釈される。今後、反応の方向の存否を確認してから、まとめる予定である。 第二のラセミ体として、フェニルアラニンNCAの単結晶の作成に取り組んだ。数十回の試みの末、現在、望ましい結晶が、容器の中で成長している段階である。このまま、重合による破壊がなければ、X線結晶構造解析に取り組めることが期待出来る。 なお、ラセミ体アミノ酸との比較の為に、従来から行ってきた、L-体アミノ酸NCAについても、実験を続けており、本年度は、総説的な論文3報を仕上げることが出来た。
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[Publications] 金澤 等: "アミノ酸NCAの固相反応性は何が決定するのか" 化学. 47. 692-698 (1992)
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[Publications] 金澤 等: "トポ化学反応でタンパク質をつくる" 現代化学. 259. 28-34 (1992)
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[Publications] H.KANAZAWA: "Investigation of the solid state polymerization of α-amino acid anhydrides with reference to their crystal structures." Polymer. 33. 2557-2566 (1992)