1992 Fiscal Year Annual Research Report
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04806009
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
筒木 潔 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (80180024)
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Keywords | 泥炭土 / 泥炭地植物 / フェノール性化合物 / リグニン / 脂肪酸組成 / 環境指標 / 古環境 / 土壌有機物 |
Research Abstract |
北海道を始め日本各地に分布する泥炭層は、最終氷期以降の気候変化、植生変化、火山活動および地形変化を記録して残している。本研究ではこの泥炭層に刻み込まれた歴史を解明するため、嫌気的条件下で微生物分解を受け難い、リグニン由来のフェノール性化合物組成および脂質組成の分析を行なった。 実験には北海道各地の主要泥炭地から採取した4泥炭断面の各層位から得た42試料と、各部位に分けた構成植物24試料を供試し、酸化銅アルカリ分解によって生成するフェノール性化合物およびクロロホルム-メタノールで抽出される脂質画分をメタノリシスして得られる脂肪酸メチルエステルをガスクロにより定量した。 ヨシ、ヌマガヤ、ササ等のイネ科植物からは、多量のケイ皮化合物およびシリンジル化合物が生成した。ホロムイスゲ、ワタスゲ、フトイ等のカヤツリグサ科の植物はイネ科植物よりもケイ皮化合物生成量が少なかった。ツルコケモモ、エゾイソツツジ、ヤチヤナギ等の木本類被子植物からのケイ皮化合物生成量はさらに少なかった。ミズゴケからは主としてP-ヒドロキシフェニル化合物とバニリンのみが生成し、シリンジル化合物およびケイ皮化合物は生成しなかった。 脂肪酸組成も構成植物ごとに著しい特徴を示した。ヨシからはアラキジン酸が、ヌマガヤからはステアリン酸が、ミズゴケからはパルミチン酸およびオレイン酸を始めとする不飽和脂肪酸が、他の植物と比較して著しく多く生成した。 泥炭土壌からのフェノール性化合物および脂肪酸類の生成量は構成植物からの生成量に匹敵するほど高く、これらの化合物の泥炭中での安定性を示した。構成植物におけるこれらの化合物の組成の特徴もかなり泥炭中に残っており、泥炭土の堆積過程や植生変遷の解明に有用であった。
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