1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04806010
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茅野 充男 東京大学, 農学部, 教授 (10007677)
|
Keywords | rhizobox / 根圏 / 養分分布 / ダイズ / オオムギ / 微量元素 / マンガン / 鉄 |
Research Abstract |
前年度に続き根圏におけるCa,Mg,K,Na,Zn,Mn,Fe,Cu濃度の変化をrhizoboxを用いて解析した.1)根圏においては、各養分の全濃度の変化は認められず、可溶性画分のみが変化した。 2)可溶性画分が根圏で増大したのはCa,Mg,Na,Mn,Fe,Zn,Cu、減少したのはKであった。 3)根圏で可溶性のKが減少したのは、土壌溶液中のK濃度と植物根による吸収量の比較から、後者が植物吸水にともなって、根の周辺に土壌溶液に溶解して輸送されるK量、即ちマスフローによる輸送量を上回っていたためと考えられる。従って、Kは根圏へ拡散によって移動すると推定された。 4)根圏で可溶性のCa,Mg,Naが増大した理由は、これら元素の土壌溶液中の濃度と植物根による吸収量の比較からマスフローによる輸送量が吸収量を上回っていたためと判定された。そして、これらの養分は根へマスフローによって輸送されると推定された。 5)可溶性のZnとCuの濃度は根圏のpH変化によって影響された。即ち、根圏のpHが低下したときは可溶性ZnとCuの濃度は増大し、逆に、根圏のpHが上昇したときは可溶性ZnとCuの濃度は減少した。根圏のpHの変化の機構は明確でないが、陽イオンと陰イオン吸収のアンバランス、根の分泌物質などが影響していると推定された。 6)可溶性のMnとFeの根圏での増大の機構は興味深い。重金属元素は一般に土壌溶液中での濃度が低くマスフローによる移動が小さいこと、土壌中での拡散係数が小さく、拡散による移動も考えられないこと、可溶性のZnとCuとは異なり根圏のpH変化によって影響されないことから、根圏での可溶性のMnとFeの増大には何か特別な機構を考える必要がある。次年度においてこれを明かにする予定である。
|