1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04806032
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
秋山 邦裕 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (20167852)
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Keywords | 外国人農業研修生 / 公益法人 / 実務研修(OJT) / 不法就労 |
Research Abstract |
外国人農業研修生の受入れルートは多様である。その代表的な受入れ、紹介団体は、【.encircled1.】日中農交、【.encircled2.】オイスカ、【.encircled3.】国際農業者交流協会、【.encircled4.】日タイ友好団、【.encircled5.】国際協力事業団、【.encircled6.】国際農友会、【.encircled7.】県農業団体、などである。このうち本年度は、K県における公益法人の事例を調査・分析した。 K県における公益法人・K交流協会は、280人の会員が会費を負担して国際交流に寄与することを目的に、設立・許可(平成2年12月)されたものである。この協会では、中国・フィリピン・メキシコなどから海外農業研修生約60人の受入れ実績を有している。しかしながら、外国人研修生が研修内容・待遇について抗議し、大量帰国するという事態に発展した。その抗議内容は、【.encircled1.】長時間労働、【.encircled2.】低い生活費、【.encircled3.】稚拙な研修内容、【.encircled4.】パスポート押収という人権問題、などであった。この事件を契機に、この協会の立入検査が行われ、協会運営が「研修生受入れ農家からの負担金」で行われており、「定款に基づいた運営方法になっていない」ことが明らかになった。つまり、公益法人が、農家負担金」によて実質的に雇用と変わらない形態で「外国人研修生」を受入れていたのである。 このように、農業研修生の送り出し、受入れの基準は統一されておらず、制度化は緊急な課題といってよい。一応、研修内容は実務研修(OJT)と座学(OFF・JT)に分かれ、OJTは研修期間の3分の2以内に限定されることになっているが、これをチェツクする機構がないのである。そのため実態的には、就労とほとんど見分けがつかないような農業研修が行われている。実際、研修ビザで入国して研修と就労(不法)を行っている例もみられる。地域でも賃金の方が高く、それが研修生を就労へと押し流す要因ともなっている。また、帰国担保が機能せずに、不法滞在にまで及ぶものもまれではない。 農業分野では一般的に技能・技術の教育・継承がシステム化あるいはマニュアル化されていない。そうした問題点が外国人農業研修の場では濃縮された形で発現している。農業分野では資格・検定制度にのるような農業技能・技術の認定が他の分野に比べて遅れている。早急に具体的な対策が講じられる必要があろう。
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