1992 Fiscal Year Annual Research Report
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04806044
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
太田 千佳子 帯広畜産大学, 畜産学部, 助手 (10176894)
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Keywords | 馬 / ロタウイルス |
Research Abstract |
ロタウイルスは、自然界では希な2本鎖RNAウイルスである。この型の遺伝子は、非常に強いRNA鎖相互の結合を持つため、2本鎖DNAよりもむしろ分子構造上の安定性は高い。従って、他の型の遺伝子とは異なる特有の遺伝子の進化速度を持っているものと考えられるが、この点に関する実証的な研究は、未だなされていない。本研究は、ロタウイルス遺伝子の進化速度を明らかにすると共に、その変異が「分子進化の中立説」で説明出来るかどうか論ずることを目的とした。 ロタウイルスには、現在14の血清型が知られている。馬では、血清型3型が最も多い。本研究では、北海道の一軽種場牧場で1986年以来1992年迄毎年、互いに類縁関係にある血清型3型馬ロタウイルイスを、仔馬下痢症から分離した。これら一連のウイルスのプロトタイプである1986年の分離株について、血清型をコードするVP7遺伝子の塩基配列を決定した。この配列は、イギリスの馬ロタウイルスのそれと較べ塩基配列で92%のホモロジーを示した。また、1987年以降の各年の代表分離株についても、その配列を決定したところ、相互に99.3から99.7%のホモロジーが認められた。 仮に、ここで見られた塩基の置換が正しいとすると、ロタウイルスの年当たりの塩基置換率は、塩基当たり約10^<-3>程度と推察された。しかしながら、今回実測した数年間で0.3〜0.7%の塩基配列上の変異は極めて微少である為、更に次の2点について信憑性を確かめなければ、変異率が中立説で説明可能かどうか論じられない。第1に、ウイルスのクローナルな変異を各年度の変異と見做している誤りは無いかどうか、また第2に、ウイルスの機能上重要な塩基配列部位に変異が集積している可能性についても今後検討する必要がある。
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