1992 Fiscal Year Annual Research Report
HIV脳症発症機序解明のための基礎研究:gp120と脳内糖脂質の特異的結合
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04807034
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
木村 純子 (財)東京都神経科学総合研究所, 微生物学研究部門, 主事研究員 (20142151)
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Keywords | HIV脳症 / HIV-1 gp120 / 脳内糖脂質 / 培養脳細胞 |
Research Abstract |
今年度は、gp120によるミエリン形成異常の可能性について重点的に研究を進めた。gp120が特異的に結合するガラクトセレブロシド、スルファチド、GM4(ガングリオシドの一種)等は、種を超えて普偏的な物質であるので、ミエリン形成を短期間に起こすラット大脳皮質細胞培養を用いて、gp120の影響を調べた。 まず、ラット大脳皮質細胞へのgp120の結合を調べたところ、gp120は主にオリゴデンドロサイトに結合を示した。また一部のGFAP陽性type2様アストロサイトや少数の小型ニューロンの細胞体にも結合がみられたが、ラットのマクロファージもしくはマイクログリアには結合を示さなかった。 次に、ミエリンを高率に起こす培養条件下でgp120を高濃度(50-100nM)に加えたところ、対照群に比べミエリン形成が阻害された。この場合、オリゴデンドロサイトの数には変化はなく、細胞体にミエリン塩基性蛋白(MBP)の発現がみられたが、オリゴデンドロサイト特有の突起が抗MBP抗体で染色されなかった。またWestern blotでもMBP産生にgp120添加による影響はほとんどなかったことから、gp120はオリゴデンドロサイトの突起伸長もしくはMBPの突起への輸送に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられた。gp120のneurotoxityの報告もあるので特異抗体でニューロンを調べたが、この系ではニューロン自体には数、形態に異常は認められなかった。ミエリンを形成後gp120を加えた系でも、gp120添加群ではミエリン消失が速かに起きた。以上の結果から、HIV脳症のdiffuseな脱髄の原因の一つは、gp120によるオリゴデンドロサイトの機能障害である可能性が、考えられた。
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