1994 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染症における唾液中のウイルス特異抗体の疫学的意義に関する研究
Project/Area Number |
04807040
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Research Institution | YOKOHAMA CITY UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE |
Principal Investigator |
市川 誠一 横浜市立大学, 医学部, 講師 (90106302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽田 研二 横浜市立大学, 医学部, 教授 (80154706)
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Keywords | 唾液抗体 / 疫学 / ムンプスウイルス / 唾液IgG抗体 / 唾液IgA抗体 / ABC-ELISA法 |
Research Abstract |
〔研究経過〕唾液は採取が容易で被験者に苦痛を与えないなどの利点があり、血清にかわる疫学研究への利用が考えられる。唾液には血清滲出性のIgGが微量含まれており、高感度な抗体検出法を用いることで、IgGクラス特異ウイルス抗体の検出が可能である。この点に関しては、我々はHIV抗体検査に唾液が有用であることを報告した。また、分泌性のIgAについては、IgAクラス抗体が感染後数週間で出現し数カ月で消失するとされており、その有無によって感染時期の推定が可能である。本研究では昨年度から、唾液中の単純ヘルペスウイルス(HSV)とムンプスウイルス(MV)との特異抗体を高感度に推定するABC-ELISA法を確立し、検体としての唾液の有用性を検討した。また、今年度は同様の方法での風疹ウイルス(RV)抗体測定についても検討した。ABC-ELISA法は、ウイルス抗原固相による間接ELISA法(IE)に、Biotin結合抗ヒトIgGあるいはIgA抗体(家兎IgG、VECTASTAIN)、Avidin-Biotin complex標準キット(VECTASTAIN)を応用した方法で、IEに比して10倍以上の感度があった。 〔本年度の実績〕神奈川県内の2小学校(Y及びK校)の4年以上の学童から採取した唾液について、HSVのIgGクラス抗体を測定した。HSV抗体陽性率は、K校が32.7%,Y校が29.3%で両校間に差異はなく、また、抗体価分布も両校間に差異はなかった。この成績は、他の研究で報告されている血清の抗体保有率とほぼ同率であり、唾液でも十分にHSVの抗体保有状況を把握できるものと思われた。また、両校で抗体保有率が同程度であったことは、接触感染系のHSVは、両校でほぼ同じ感染率であることを示唆している。次年度の報告で、唾液による抗体検査が、感染状況の把握や疫学的な解析に有用であるかについて、呼吸器を侵入門戸とするMV及びRV等の成績と併せて考察する。
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