1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04807072
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
片方 陽太郎 山形大学, 医学部, 講師 (10152670)
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Keywords | ケラチン / 有棘細胞癌 / 表皮細胞分化 / 中間径線維 / ケラチン遺伝子 / 分子生物学 |
Research Abstract |
有棘細胞癌(SCC)と基底細胞癌(BCC)は皮膚癌の中で上皮性腫瘍の代表といえ、この両者は種々の要因により上皮細胞の異常分化をきたしたものといえる。1975年に初めてSCCの細胞株の樹立以来、細胞の分化あるいは癌化のメカニズムの研究材料として汎用されている。これまでこの培養株には分化マーカーケラチンの1つであるK1ケラチンペプチド(pI7.8,MW68Kd)は存在しておらず、そのためSCCは未分化な癌とも言われてきた。多くの研究者はケラチン分析の際、高濃度塩溶液【1.5M KCl/0.5%TritonX-100/140mM NaCl etc】で細胞を処理していた。この溶液は元々生体組織(癌組織)に多量に混在する皮下脂肪や脂溶性物質を除くために用いられたものと推定されるが、培養細胞にそのまま応用しており細胞生化学的にかなり過激的であると思われたので、希薄塩溶液【10mM Tris・HCl(pH7.6)/5mM EDTA/PMSF(0.3mg/ml)】で処理し、ケラチン蛋白を分析した。その結果、K1ペプチドの存在を蛋白生化学的(2D-PAGE),モノクロナール抗体による免疫反応とmRNAレベルで証明した(文献1)。この事実が一般的であるか否かさらに他の4種を用いて行ったが同様の結果を得、K1ペプチドの存在はSCC培養株に普遍的であることが判明した。(文献2)。 病理組織学的にみれば、未分化な、つまりK1ペプチドを多く発現していない、いわゆるBroaders分類のIV型(予後が悪い)は細胞の株化が著者の研究室の経験からも比較的容易に思われる。これまでのSCC細胞株は元々K1ペプチドの発現が低いものであった可能性が示唆される。この様なSCC培養株に対し高濃度塩溶液で処理していたため、K1ケラチンペプチドの存在を見逃していた可能性が強く、当然の結果ともいえる。K1ケラチンペプチドはSCCの予後に対する1つのクライオリテイーになりうるかもしれない。
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[Publications] Katagata,Y.: "Occurrence of differentiated keratin peptide (Kl) in cultured human squamous cell carcinomas" Biochem.Biophys.Res.Commun.182. 1440-1445 (1992)
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[Publications] Katagata,Y.: "Evidence of differentiated keratin peptide (K1) in cultured human squamous cell carcinomas- Demonstration of generality by three different" J.Dermatol.19. 781-785 (1992)
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[Publications] 片方 陽太郎: "表皮細胞におけるタンパク合成とその代謝制御" Fragrance Journal. 20. 48-56 (1992)