1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04807072
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
片方 陽太郎 山形大学, 医学部, 講師 (10152670)
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Keywords | ケラチン / 有棘細胞癌 / 表皮細胞分化 / 中間径線維 / ケラチン遺伝子 / 分子生物学 |
Research Abstract |
従来、培養有棘細胞癌(SCC)では上皮細胞の分化(角化)のマーカーケラチンであるK1(68KDa,pI7.8)とK10(56.5KDa,pI5.3)ペプチドが発現していないといわれてきた。これまではSCC株からケラチンペプチドを調製する際、高濃度塩溶液[1.5M KCl/0.5%Triton X-100/140 mM NaCl/10 mM Tris・HCl(pH7.6)/5mMEDTA/PMSF(0.1mg/ml)〕で細胞を処理後、SDS-PAGEなどで分析していた。この高濃度塩溶液は元来、腫瘍組織を研究材料にした実験に用いられたもので、培養細胞の実験系では細胞にとって少し過激すぎると考え、より温和な希薄塩溶液[10 mM Tris・HCl(pH7.6)/10 mM EDTA/PMSF/(0.3mg/ml)]で2種類のSCC株を用いて改めて分析した。 驚くことに、多くはないがK1ペプチドの存在を、生化学的、免疫化学的およびmRNAレベルで証明した。この事実が一般的であるか否かを、さらに4種のSCC株で行なったが、全ての細胞株でその存在が確認され、K1ペプチドの発現はSCC株に普遍的であることが初めて実証された。次に、このK1ペプチドのペアーケラチンであるK10ペプチドについても同時に分析したが、6種いずれにも存在を示すデータは得られなかった。6種の細胞株に発現していたK1プペチドは、ケラチンの線維形成したものとは異なり、低濃度(1-2M)の尿素(5%β-ME)溶液に約90%可溶化された。 以上の結果より、SCC株にK1ペプチドは単独で存在し、多くの研究者は見逃していた可能性が考えられた。さらに尿素溶液に対する溶解性から、このK1ペプチドは生化学的に変異を有する可能性があり、そのためK10ペプチドが誘導されないことも示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 片方陽太郎: "表皮細胞におけるタンパク合成とその代謝制御" FRAGRANCE JOURNAL. 20. 48-56 (1992)
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[Publications] Katagata,Y.,Aso,K.,Sato,M.& Yoshida,T.: "Occurrence of differentiated keratin peptide(K1)in cultured human squamous cell carcinomas" Biochem.Biophys.Res.Commun.182. 1440-1445 (1992)
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[Publications] Katagata,Y.: "Evidence of differentiated keratin peptide(K1)in cultured human squamous cell carcinomas-Demonstration of generality by three....." J.Dermatol.19. 781-785 (1992)
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[Publications] Katagata,Y.& Yoshida,T.: "Confirmation and an unusual quality of the differentiated keratin(K1)in cultured squamous cell carcinomas" FEBS Lett.316. 5-11 (1993)
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[Publications] 片方陽太郎: "上皮性腫瘍のケラチン発現-表皮細胞由来の腫瘍を中心に" 臨床皮膚科. 47. 63-67 (1993)
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[Publications] 片方陽太郎: "ケラチン蛋白質の生化学,“機能、構造、そして遺伝子まで"" 蛋白質・核酸・酵素. 38. 2711-2722 (1993)