1993 Fiscal Year Annual Research Report
頻拍性不整脈に対する胸部交感神経節切除術に関する研究
Project/Area Number |
04807097
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三井 利夫 筑波大学, 臨床医学系, 教授 (60010170)
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Keywords | 先天性QT延長症候群 / 星状神経節 / 交感神経支配不均衡 / 上室性頻拍 / 心室性頻拍 / 体表心電加算平均法 / QRSD / RMS_<40> |
Research Abstract |
<左側交感神経刺激と遮断実験における体表加算平均心電法による評価> 【方法】VCM-3000を用い、Rat(n=6)を対象とした。Simson法に基づき3方向のVector Magnitudeより、filtered QRS時間(QRSD:msec)、後方40msecの平均電位(RMS_<40>:μV)を計測した(Bandpassは40-300Hz)。Pentobarbital麻酔下に、左側星状神経節を剥離した。刺激は日本光電製Electronic Stimulator SEN-3201を用い、0.1msecの矩形波刺激を周波数100Hz、0.4Vで与えた。遮断は2%キシロカインを局所注入し、処置前後の2つの指標を検討した。 【結果】左星状神経節刺激前のQRSDは89±9msecであったが、刺激中は110±21msecとなり、刺激後は105±15msecと刺激前に比べていずれも増加する傾向を示した(p:NS)。また、刺激前のRMS_<40>は14.1±10.5μVであったが、刺激中は13.3±9.4μVであり、刺激後は10.8±3.4μVと刺激後に低下する傾向を示した(p:NS)。一方、遮断実験では、QRSDは遮断前の89±8msecに対し、遮断後は131±31msecに増加した(p<0.05)。また、RMS_<40>は遮断前の17.4±8.6μVに対し、遮断後は5.3±2.7μVと低下した(p<0.05)。また、犬を用いた左側星状神経節の刺激と遮断もRatと同様の結果を示した(n=2)。 【考察】先天性QT延長症候群(LQTS)では右側交感神経機能が先天的に低下し、組対的に左側交感神経機能は優位となるため左右の交感神経緊張にアンバランスが生じ、VT発作の背景となっていると考えられている。従って、左側星状神経節の遮断が最も合理的な最初の治療であるとされる。本実験においては左側星状神経節の刺激によりQRSDはやや延長する傾向を示し、その一部にはfiltered PQ時間が短縮し、脱分極開始が早くなるものもみられ、左側星状神経節刺激による心室興奮の不均一性を示唆した。また、左側交感神経節へのキシロカインの投与(遮断)によるQRSDの延長、RMS_<40>の低下は、心室伝導時間の後方への延長を示し、新たな交感神経不均衡を作り出してはいるものの、LQTSによる左側交感神経の過剰な興奮に対して拮抗する処置であることが示された。
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