1992 Fiscal Year Annual Research Report
特定細胞をターゲットとする遺伝子治療に向けての革新的技術
Project/Area Number |
04807163
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
矢守 隆夫 (財)癌研究会, 癌化学療法センター・基礎研究部, 研究員 (60200854)
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Keywords | ラムダファージ / λfoo / 遺伝子治療 / 細胞特異性 / 遺伝子ベクター / レクチン / IGF-I / BPA |
Research Abstract |
この研究は、バクテリオファージλfooベクターを用い、ねらった細胞に特定の遺伝子を導入する技術を確立し、細胞特異的遺伝子治療等へ応用することをめざしている。λfooベクターは2つの外来遺伝子のクローニング部位を持つ。第1の外来遺伝子(リガンド遺伝子)は、ウイルス粒子表面に発現し、第2の外来遺伝子(モジュレーター遺伝子)は、動物細胞内で発現するよう工夫されている。本年度は、リガンド遺伝子として、植物レクチンBanhinia purpurea agglutinin(BPA)のcDNAをλfooベクターに組み込み、BPA蛋白質を生理活性を保ったままλfoo粒子表面に発現させることを試みた。テール蛋白質遺伝子の下流にBPA cDNAを導入したλfoo(λoff-BPA)を作成した。サザンブロッティングによりBPA cDNAが組み込まれたことを確認した。ついでλfoo-BPAのプラークをニトロセルロースにブロットしたものを抗BPA抗体で免疫染色し、BPA蛋白質の発現を確認した。しかし、この蛋白質にはBPAの特異的糖ラクトースへの結合能は保持されていなかった。原因として、BPAはその糖結合部位の構造保持にMn2+を要求するので、BPAがλfoo粒子上に発現する際にもMn2+がないと糖結合部位のフォールディングが正しく起こらないことが考えられた。そこでλfoo-BPAと大腸菌の培養液にMn2+を添加した。Mn2+存在下で得たλfoo-BPAはラクトース-ビーズに吸着したが、Mn2+非存在下で得たλfoo-BPAはこれに吸着しなかった。したがって、λfoo粒子上に生理活性を保持したBPA蛋白質を発現させるにはMn2+を添加することが重要と考えられる。さらに、新たなリガンド遺伝子としてインスリン様増殖因子I(IGF-I)のcDNAを組み込んだλfooも作成し、そのIGF-I受容体への結合能を調べつつある。これまでの成果に基づき、λfooベクターへのリガンド遺伝子導入は技術的に問題はないと考えられる。今後は、λfooベクターへのモジュレーター遺伝子の導入へと研究を進める予定である。
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