1993 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌の増殖過程における2つのグルコース取り込み系の生理的役割
Project/Area Number |
04808030
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Research Institution | YAMAGUCHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山田 守 山口大学, 農学部, 助教授 (30174741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 康枝 山口大学, 医学部, 助手 (00166737)
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Keywords | グルコース脱水素酵素 / gcd遺伝子 / cAMP-CRP / Fnr / 発現調節 / PTS |
Research Abstract |
大腸菌をはじめとしていくつかの細菌では炭素原としてグルコースを加えた場合、少なくとも2つのルートで細胞内へ取り込まれる。その1つは、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするグルコース脱水素酵素によりグルコースをペリプラズム側で直接酸化し、グルコン酸として細胞内へ取り込む(GDH)系である。この系はグルコース酸化と同時に電子を呼吸鎖へ流し、プロトン勾配や膜電位等の膜エネルギー形成に寄与する。もう1つは、グルコースをリン酸化して取り込むリン酸基転移酵素(PTS)系である。本研究はこれまで未解析のGDH系の解析を中心として、この2つの系の大腸菌の増殖過程における生理的役割を明らかにすることを目的として行なった。 グルコースの脱水素酵素遺伝子(gcd)の解析を行ない、以下の結果を得た。1)遺伝子構造解析や融合遺伝子解析により,本酵素の膜上構造の決定と補酵素PQQの結合部位および活性部位を予測した。2)精製酵素を用いた再構成実験により、本酵素とユビキノン間で膜電位の形成が成されないことを証明し、またユビキノンの結合部位を予測した。3)プライマー伸長反応や変異株をもちいた解析等から、gcd遺伝子はcAMP-CRPおよびFnrにより負に制御されていることを明らかにした。4)部位特異的変異体を作製し、これらの調節因子の結合部位を決定した。特に、Fnrは2個所に結合し、DNAを湾曲させていると予測された。4)gcd遺伝子の破壊株(gcd^-)やgcd^-pts^-を作製し、生育への影響を検討した。 上述のようにgcd遺伝子はcAMP-CRPにより負に制御されている。一方、PTS系を構成するEnzymeI-Hpr-EnzymeIII^<glu>オペロンがcAMP-CRPにより正に制御されている。cAMPの細胞内濃度が、大腸菌の増殖初期(誘導期から対数増殖期前期)に極めて低く、増殖後期(対数増殖後期から定常期)に急速に高くなることを考慮すると、増殖初期にgcd遺伝子の発現が促進され、PTS系の構成成分の遺伝子発現が抑制されると推測される。一方、増殖後期にはgcd遺伝子の発現が抑制され、PTS系の構成成分の遺伝子発現が促進されると推測される。大腸菌はこのような2つの系の発現調節によって合理的なグルコース代謝を可能にしていると思われる。
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[Publications] M.Yamada,S.Asaoka,M.H.Saier,Jr.,and Y.Yamada.: "Characterization of the gcd gene from Escherichia coli K-12 W3110 and regulation of its expression." J.Bacteriol.175. 568-571 (1993)
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[Publications] M.Yamada,K.Sumi,K.Matsushita,O.Adachi,and Y.Yamada.: "Topological analysis of quinoprotein glucose dehydrogenase in Escherichia coli and its ubiquinone-binding site." J.Biol.Chem.268. 12812-12817 (1993)
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[Publications] A.A.Talukder,S.Yanai,and M.Yamada.: "Analysis of products of the Escherichia coli genomic genes and regulation of their expressions." Biosci.Biotech.Biochem.58. 117-120 (1994)