1992 Fiscal Year Annual Research Report
重度脳障害事例における外界および対人認知機能の発生に関する発達神経心理学的研究
Project/Area Number |
04831003
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
片桐 和雄 金沢大学, 教育学部, 助教授 (00004119)
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Keywords | 重度脳障害児 / 認知機能 / 発達神経心理学 / 心拍反応 |
Research Abstract |
人間の認知機能は外的環境に対する選択的反応の発生を基盤にして形成される。この機制を明らかにするために、本研究では、1.刺激に対する反応の選択性獲得過程をより展開的に観察しうる幼若な脳障害児を対象にして、2.その脳機能の成熟・障害状態(生物学的要因)をできるだけ多水準的に把握した上で、3.実験的働きかけ(人的豊環境条件)を継続して行い(生活経験要因)、4.日常生活場面において作用する各種刺激、特に療育者に対する反応動態を心理生理学的指標に基づいて分析することを試みた。まず、上記の課題1、2に関して、行動上では応答的反応を観察することが困難で、重度脳障害を有するとされるものについて各種誘発電位測定を実施した。神経系の末梢から中枢レベルに対応する測定データを分析した結果、脳機能の障害が主として皮質水準にあるものと、それが皮質下脳幹水準にまで及んでいるものを鑑別・診断することができた。これによって、本研究で対象とする前者の典型例2人、後者の典型例4人を抽出することができた。さらに、上記課題3、4に関しても、本年度において、すでに3〜5か月間にわたる測定資料を得て分析を進めている。現時点までに得られた主要な知見は、環境条件変動や刺激の作用に対する変化を行動上では観察することが困難な事例でも、心拍反応などの心理生理学的指標で対応的変化が認められること、特に、脳機能の障害が主として皮質水準にある事例の場合には、実験的働きかけの継続の過程で一過性心拍反応の発達的転換を示唆する資料が得られた。一方、皮質下脳幹水準にまで及ぶ脳機能障害を有する事例では、大きな環境条件変化や強い働きかけ事態においても心拍の持続的変動がみられないなど、覚醒系機構の重篤な障害の反映がうかがわれる。これらの諸点は、平成5年度における研究の継続を通して発達的観点からより明確に記述されると考えられる。
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