1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04831005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 和生 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (80183101)
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Keywords | 錯視 / 霊長類 / ニホンザル / チンパンジー / 知覚 |
Research Abstract |
第1年度の目的は、霊長類の錯視知覚を分析することにあった。計画に沿って実験機器(コンピュータシステム)を購入し、タッチパネルを組み込んだ自動実験装置を製作し、ポンゾ錯視に関する実験的な分析を行った。初験体はアカゲザル3頭である。手続きは条件性の位置弁別で、試行開始とともにディスプレイ中央に白地に黒の横棒が提示された。被験体がこれに数回触れると、画面下部の左右に選択図形が2つ提示された。中央の横棒がある長さより長い場合には一方の選択図形、短い場合には他方の選択図形に触れることが訓練された。これは「長い」「短い」という言語報告に対応する。6種の横棒について正しい報告ができるように訓練した後、45度傾き、上方に向けて収斂する逆V型の線分を文脈刺激として付加した。横棒の位置を一定に保ったまま、文脈刺激の位置を上下に変化させたテスト刺激を、訓練刺激に混ぜて提示した。テスト試行では反応はすべて強化された。その結果、文脈刺激の頂点と横棒が近接している時には離れているときに比較して「長い」という報告が多くなることが示され、サルがポンゾ錯視を知覚していることが明らかにされた。次に文脈刺激の角度を60度にし、左右の文脈刺激の離反度を操作して文脈刺激と横棒との隙間の効果を調べたところ、隙間が小さくなると「長い」という報告が増えることがわかった。このことはポンゾ錯視の原因が図形のみかけの遠近ではなく棒の両端の隙間にあることを示唆する。現在、アカゲザルでさらに詳しい分析を行うと同時に、種間比較を行うため、チンパンジー2頭にも同様の訓練を実施している。まもなく比較可能な資料が得られるであろう。今後の課題としては、同じ図形をヒトはどのように知覚するかを調べることと、遠近の効果をもう少し検討するために遠近感のある写真に図形を重ねた場合の錯視量の変化を調べることを計画している。
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