1993 Fiscal Year Annual Research Report
イノシトールによる新しい情報伝達機構の遺伝子単離に基づく解析
Project/Area Number |
04833021
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Research Institution | KYUSYU INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
仁川 純一 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (00134271)
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Keywords | イノシトール / 転写調節 / 遺伝子クローニング / プロモーター / 酵母 |
Research Abstract |
イノシトールにより転写調節を受けるイノシトール輸送系1の遺伝子ITR1のプロモーター領域を、染色体上のHIS3遺伝子の上流に挿入した株を用いて、遺伝子の単離を行った。この株ではHIS3の発現が、ITR1遺伝子と同様にイノシトールによって転写抑制を受ける。従って、イノシトール存在下ではHIS3の発現が抑制され、細胞はヒスチジン要求性を示す。多コピー酵母染色体ライブラリーを用いてこの株を形質転換し、イノシトール存在下でもヒスチジン要求性を示さなくなった株を検索した。このスクリーニングによって、イノシトールによるITR1遺伝子の転写抑制に対し、これを解除する因子すなわち遺伝子発現に正に働く因子の遺伝子が単離できると考えた。その結果、9個の形質転換体が得られ、そのプラズミドの構造を調べた結果、三種の遺伝子に分類できた。これらの遺伝子をDIE1、DIE2、DIE3と名付けた。DIE3遺伝子による抑制は弱いものであったので、DIE1、DIE2遺伝子についてさらに解析を進めた。mRNA分析及びレポーター遺伝子としてlacZを用いた解析から、DIE1、DIE2遺伝子はITR1遺伝子のみならずINO1遺伝子の発現を高めることが明らかになった。DIE1よりもDIE2の方が効果は顕著であった。塩基配列の決定の結果、DIE1は既に単離されているINO2遺伝子と同一であった。DIE2は新規の遺伝子であり、525アミノ酸からなる分子量62kDaの蛋白をコードすることが明らかになった。DIE2遺伝子は生育には必須ではない。ITR1遺伝子の発現はDIE1の次損により顕著に低下し、一方DIE2の次損により若干低くなった。以上のことから、DIE1遺伝子産物はITR1やINO1を始めとする種々の遺伝子の発現に必須な遺伝子であり、DIE2遺伝子産物は、イノシトールによる転写抑制を抑えるのに必要な遺伝子で、ともに転写調節に重要な働きをしていることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)