1993 Fiscal Year Annual Research Report
高次神経系におけるカルシウム依存性情報伝達調節因子に関する研究
Project/Area Number |
04833022
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
高松 研 東邦大学, 医学部, 助教授 (90154898)
|
Keywords | Calcium-binding protein / Hippocalcin / cDNA / Rat / Human / Chromosomal mapping |
Research Abstract |
平成4年度に海馬特異的カルシウム結合蛋白質ヒポカルシンをラット脳に見い出した。この蛋白質は細胞膜とカルシウム濃度依存性に結合することが知られていたが、反応部位はミリスチン酸化されたアミノ末端で、カルシウムを結合することによりアミノ末端が蛋白質分子の表面に現われ、アンカーとなって細胞膜と結合することが示された。発育にともなった発現を検討したところ、海馬錐体細胞ではシナプス形成にともなって発現量が増加するが、大脳皮質錐体細胞や小脳プルキンエ細胞ではシナプス形成期に高い発現を認めるが形成後はむしろ発現量が減少することが示された。このことはピポカルシンがシナプスの可塑性と関連していることを強く示唆する。放射性標識ヒポカルシンを作製し、フィルターオーバーレイ法により標的蛋白質を検討したところ、分子量45Kの細胞質蛋白質とカルシウム依存性に反応することが示された。この蛋白質を精製し、部分アミノ酸配列を決定したところ、クレアチンキナーゼであることが示された。したがって、ピポカルシンは神経細胞の活動に応じた局所のカルシウム濃度を感知し、その部位にエネルギーを運搬する可能性が考えられる。しかし、クリアチンキナーゼ以外にもピポカルシンと結合すると思われる蛋白質が存在しており、他の機能を有することが考えられる。また、ヒポカルシンと相同性の高いcDNAクローンを単離し、191個のアミノ酸からなる蛋白質をコードしていることを見い出した。特異抗体を作製し組織分布や神経系内での局在について検討したところ、大脳皮質錐体細胞の一部と海馬歯状回顆粒細胞に強い発現を認めた。さらにヒト・cDNAクローンの解析を進め、5種類の異なったcDNAクローンが単離した。これらの結果は、相同性の高い数種の蛋白質が神経系に存在し、局在する神経細胞が異なっていることを示しており、機能の解明が期待される。
|
-
[Publications] Kobayashi,M.,Takamatsu,K.,Saitoh,S.and Noguchi,T.: "Distribution of hippocalcin mRNA and immunoreactivity in rat brain." Neurosci.Lett.157. 107-110 (1993)
-
[Publications] Saitoh,S.,Takamatsu,K.,Kobayashi,M.and Noguchi,T.: "Myristoylation of hippocalcin is linked to its calcium-dependent membrane association properties." J.Biol.Chem.268. 18898-18904 (1993)
-
[Publications] Takamatsu,K.and Noguchi,T.: "Hippocalcin,a calcium-binding protein of the EF-hand superfamily dominantly expressed in the hippocampus." Neurosci.Res.17. 291-295 (1993)
-
[Publications] Saitoh,S., Takamatsu,K.,Kobayashi,M.and Noguchi,T.: "Expression of hippocalcin in the developing rat brain." Develop. Brain Res.(in press). (1994)