1992 Fiscal Year Annual Research Report
地球型惑星の原始マントル分化過程と初期進化の理論的研究
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04835007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 豊 東京大学, 理学部, 助教授 (90192468)
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Keywords | マグマオーシャン進化 / 臨界部分溶融度 / 硬いマグマオーシャン / 柔らかいマグマオーシャン / 化学分化 / 原始地殻の形成 / 初期地球 |
Research Abstract |
原始マントルの分化過程において重要な役割を果たすマグマオーシャンの進化について、数値モデルを用いて理論的な解析を行った。多くの物理過程を考慮に入れたマグマオーシャン進化の数値モデルの結果の解析から、必ずしも全ての物理過程が同時に重要な役割を果たすわけではないことが示された。これに基づいてマグマオーシャンの進化段階を区分し、各段階について考察した。成果の概要は次のとおり:(1)部分溶融状態の物質では部分溶融度がある臨界部分溶融度より大きいか小さいかで著しく粘性率が変化する。このため、マグマオーシャン中の物理過程も部分溶融度が臨界部分溶融度より大きいか小さいかによって著しく異なる。これによってマグマオーシャン進化を2段階に区分できる。部分溶融度が臨界部分溶融度よりも大きいマグマオーシャンを「柔らかいマグマオーシャン」、部分溶融度が臨界部分溶融度よりも小さいマグマオーシャンを「硬いマグマオーシャン」と名付けた。(2)柔らかいマグマオーシャンの内部では激しい対流混合がおこるために化学分化が進行しない。また、急速な対流冷却のために百万年程度が消滅し、硬いマグマオーシャンに移行する。(3)硬いマグマオーシャンの内部では対流運動が相対的に不活発なので化学分化が進行する。また、冷却が遅いのでこの状態は数億年間持続し、形成後数億年間の地球の原始マントルは硬いマグマオーシャンの状態にある。(4)形成直後の原始地球表層には既に海洋が存在する。このため薄い急冷地殻が形成されるが、硬いマグマオーシャンが存在する間はこの原始地殻は内部からの火成活動によって頻繁に更新される。これは約40億年よりも古い地殻岩体が見いだされない理由を説明する。(5)小天体衝突による原始地殻の更新よりも、内部からの火成活動による更新の方が影響が大きい。これらの研究成果についてはすでに国際学会で口頭発表を行い、また論文として印刷予定である。
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[Publications] Abe,Yutaka: "Thermal evolution and chemical differentiation of the terrestrial magma ocean Proceedings of the IUGG Symposium “Chemical Evolution of the Earth and Planets"" IUGG/AGU.
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[Publications] Abe,Yutaka: "Physical state of very early Earth" Lithos.
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[Publications] Abe,Yutaka: "Protocrust of the Earth just after the end of accretion." Proc.25th ISAS Lunar Planet Symp.
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[Publications] 阿部 豊: "形成直後の地球表層環境" 遊星人. 1. 111-116 (1992)