1992 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経伝達能の加齢変化と痴呆における変貌に関するポジトロン断層を用いた臨床研究
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04836003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 正敏 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助教授 (00125501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
目黒 謙一 東北大学, 医学部・付属病院・老人科, 助手 (90239559)
藤原 竹彦 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助手 (70238632)
井戸 達雄 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (80134063)
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Keywords | ドーパミン神経伝達 / D2受容体 / ポジトロン断層法 / 痴呆 / 加齢 |
Research Abstract |
中枢神経における神経伝達機能の加齢変化と痴呆患者における変貌をポジトロン断層法(PET)を用いて評価することが本研究のテーマである。本年度は、^<18>F標識のドーパ(FDOPA)、^<11>C標識のYM09151-2(YM)を用いてドーパミン神経伝達系を痴呆患者において評価した。 「方法」 被検者は、9人の健常者(平均年齢62±10才)、10人のAD/SDAT(平均年齢64±11才)、7人の血管性痴呆(平均年齢73±8才)である。PETによる定量法は、FDOPAの線条体内集積率を小脳を入力と仮定するグラフ解析法を用い、ドーパミン合成能の指標とし、YM09151-2の集積を線条体におけるD2受容体への特異的集積(線条体-後頭葉)としてその対後頭葉比で評価した。 「結果」 加齢変化に関しては、ドーパミン合成能が緩やかな低下、D2受容体分布が、より急な低下を示した。痴呆患者においては、D2受容体の分布が対照老人とほぼ同等であったのに対して、ドーパミン合成能が、より低下することが判明した。特に、ドーパミン合成能は、ミニメンタルテストで評価した痴呆の重症度と有意な相関を示し、ドーパミン系の機能低下が痴呆症状の発現と密接な関係を示すことが示唆された。 「考察」 本研究で得られた結果、重症痴呆患者に於いて、ドーパ水酸化酵素の機能低下があり、おそらくは、黒質線条体神経の消失に伴なうドーパミン合成能の低下が生じていることを示唆する。一方線条体節後線維に於けるドーパミン受容体の変化は軽度であり、神経伝達物質の合成系に障害が強いことが示唆された。測定感度の関係から、大脳皮質、特に前頭葉、視床下部におけるドーパミン系のPETでの評価は、困難であるが、線条体と同等の変化が、これらの部位にも生じ、痴呆症状を修飾している可能性がある。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 伊藤 正敏: "脳活動をPETとSPECTで科学する" 新医療. 20. 51-54 (1993)
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[Publications] 谷内 一彦、渡邊 建彦、伊藤 正敏、松澤 大樹: "PETによる神経伝達物質と受容体の研究 -神経疾患への応用" 中外医学社, 309 (1991)