1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04836028
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
安藤 進 (財)東京都老人総合研究所, 生体膜部門, 研究部長 (30073000)
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Keywords | 老化 / 脳 / シナプス / 可塑性 / 脳発達 / 知能 |
Research Abstract |
「豊かな飼育環境は動物脳の発達を促進する」との作業仮説に立って、若齢から老齢にわたり脳の可塑性の発揮される程度を明らかにすることを目的とする。 離乳期ラットの同腹の仔を2群に分け、通常のケージで3匹飼いのコントロール群(SC)と、多数匹を一緒に大きなケージで飼うEC群(Enriched environment condition)とにした。EC群のケージには立体的構造物を配置して複雑な生活空間をつくってある。3週齢から7週齢まで飼育したものを若齢群、3週齢から2年齢までそれぞれの環境で飼育しつづけたものを老齢群とした。脳の発達の程度はHebb-Williamsの問題解決課題12種類を用いる知能テストによって行った。この迷路課題は、ハンドリング、シューピング、練習課題の過程を経ることによって、老齢群でも一匹の脱落もなく全個体のテストができる点で優れている。用意された12課題は難易度がいろいろ異っているので、脳発達が大きく違う群のテストにも適するものである。1課題について8試行おこない、エラー点の減少率と総エラー点で判定した。エラー点の減少速度は学習曲線と考えられ、EC群は多くの課題においてSC群よりも速い減衰曲線を示した。総エラー点を用いた成績の判定では、老若両群ともにおいてEC群の方がSC群よりエラーが少なかった。老化による影響をみると、SC群では成績が著しく悪くなったが、EC群では大きな低下は認められなかった。本研究の結果から、豊富な飼育環境は脳の知能を明確に高めること、さらに発育期から十分に可塑性を発揮させておけば老齢での脳の機能低下が効果的に遅延されることが示された。 次年度は、SC,EC両群の脳の発達の差について、単離したシナプトソームの神経化学的測定によって検討する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ando,S.,Hirabayashi,Y.Kon,K.,Inagaki,F.,Tate,S.&Wittaker,V.: "A trisialoganglioside containing a sialyl α-2-6 N-acetylgalactosamine residue is a cholinergic-specific antigen,Chol-l." J.Biochem.,. 111. 287-290 (1992)
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[Publications] Tanaka,Y.&Ando,S.: "Age-related changes in 〔^3H〕 ouabain binding to synaptic plasma membranes isolated from mouse brains." J.Biochem.,. 112. 117-121 (1992)
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[Publications] Hirabayashi,Y.,Nakao,T.,Irie,F.,Wittaker,V.P.&Ando,: "Structural characterisation of a novel cholinergic-specific ganglioside in bovine brain." J.Biol.Chem.,. 267. 12973-12978 (1992)
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[Publications] 安藤 進,脇 初枝: "C系列ガングリオシドと神経分化" 蛋白質・核酸・酵素. 37. 1908-1913 (1992)
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[Publications] 安藤 進: "「新老年学」(編集代表:荒茂肇)1章3.3 生体膜の老化" 12 (1992)