2005 Fiscal Year Annual Research Report
量子液体中に閉じこめられた多電子系の精密理論スペクトロスコピー
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04F04119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中辻 博 京都大学, 工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SAHA Biswajit 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機EL素子 / ポリフェニレンビニレン / 共役分子 / SAC-CI法 / 励起状態 / 理論精密分光学 / 励起分子の構造 / エネルギー勾配法 |
Research Abstract |
本研究課題では、SAC-CI法を用いて光機能性材料や生体科学センサーに応用されている分子の理論スペクトロスコピーを行い、その光電子過程を明らかにすることを目的としている。本年度は、発光機能をもつ有機EL素子の光電子過程を研究した。エネルギー勾配法を用いて、励起状態における構造変化を評価し、光電子過程のメカニズムの解明を行った。また、4π電子系の共役分子の2電子励起状態に関する研究を行った。 有機EL素子において、基本骨格として広く利用されているフェニレンビニレンの1量体〜5量体について、強い発光を示す第一励起状態を研究した。これまでの理論研究では、TDDFTや経験的分子軌道法が用いられており、光吸収・発光エネルギーの鎖長依存性をよく再現できなかったが、本研究で精密に実験値を再現することに成功した。また、一重項-三重項のエネルギー差についても、鎖長に対して線形に変化する結果が得られ、実験で観測されている類縁体の傾向が、このPPVの系においても成立することを理論的に示した。さらに、励起状態においても平面構造をとることを示し、発光エネルギーについても実験値をほぼ定量的に再現する結果が得られた。三重項励起状態では、一重項励起状態よりも構造変化が大きいことを明らかにした。また、励起状態における構造変化を静電力理論から定性的に説明することに成功した。 4π電子系の分子である、ブタジエン・アクロレイン・グリオキサールの2電子励起状態に注目し、高次の励起演算子を含めることにより、SAC-CI法がこれらの電子過程を精密に記述することを示した。グリオキサールの2電子励起状態については、本理論計算が初めての研究であり、強度は小さいが極めて低いエネルギー領域に存在することを示した。
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