2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J00326
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 剛 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD) (80452308)
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Keywords | 言語の進化 / 音声言語 / 音声器官 / 喉頭下降現象 / 成長 / チンパンジー / ニホンザル / 声道の二共鳴管構造 |
Research Abstract |
ヒトの声道は口腔と咽頭腔から成る二共鳴管構造であるが、他の哺乳類の声道は口腔のみから成る単共鳴管構造である。この声道の二共鳴管構造は、話しことばの形態学的基盤の一つである。ヒトでは、生後、口腔に対して咽頭腔が大きく伸長しこの構造が発達する。よって、二共鳴管構造は、ヒト系統で咽頭腔の伸長に関与する喉頭下降現象の出現によって進化したと考えられてきた。京都大学霊長類研究所飼育のチンパンジー幼児3個体は、生後、定期的に磁気共鳴画像法(MRI)を用いて頭部矢状断層画像を撮像されてきた。本年度、同3個体における4歳までの資料を分析し、ヒトの成長変化と比較した。その結果、チンパンジーでは、咽頭腔の成長はヒトと同様であるのに対して、口腔の伸長はヒトに比べてひじょうに大きいことを示した。また、その咽頭腔の伸長には、ヒトと同様の喉頭下降が寄与していた。つまり、両者の成体での声道形状の差異は、咽頭腔ではなく口腔の成長パターンの差異によって生じる。この結果をもとに、喉頭下降現象はヒトとチンパンジーの共通祖先ではすでに現れ、声道の二共鳴管構造はHomo属の進化過程で顔面が平坦化し、口腔が短縮したことによって完成したことを示唆した。この成果をまとめ海外学術雑誌に投稿した。これらの研究成果を踏まえ、音声言語の形態学的基盤と神経解剖学的基盤の成長発達がそれぞれ異なった機能適応のもと独立に進化したことを論じ、それら基盤の音声言語への二次的適応に関する進化仮説を発表した。音声器官の運動を随意に制御する神経解剖学的基盤の成長発達過程を追跡するための技術・方法論について、海外共同研究者とともに研究を行ったまた、喉頭下降現象を含む音声器官の成長変化の系統発生学的背景を明らかにするため、同研究所においてニホンザル乳幼児のMRI撮像を毎月行い、分析資料を蓄積した。
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Research Products
(3 results)