2005 Fiscal Year Annual Research Report
シジミチョウ類における日周期活動スケジュールの進化
Project/Area Number |
04J00380
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井出 純哉 京都大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日周期活動スケジュール / 日光浴 / 配偶行動 / 配偶者選択 / 体温調節 |
Research Abstract |
蝶は短い成虫期間に効率良く繁殖できるように、時間を有効に活用できるような一日のスケジュールを進化の過程で獲得して来ていると考えられる。本研究では一日の行動スケジュールを戦略としてとらえ、蝶が一日の時間をどのように活用しているかを明らかにするため、ベニシジミを対象に綿密な個体追跡調査を行った。 本種のオスは8時台〜16時台に主に活動し、ほぼ終日花などにとまって交尾するためにメスを待伏せていた。花の蜜を吸う行動は一日の後半に多く見られる傾向があった。メスはオスに比べて活動の開始が遅れて10時台〜15時台に活動した。前半は主に産卵行動が、後半にはオス同様に吸蜜が見られた。 メスの活動開始が遅れるという現象は蝶ではしばしば観察されている。これまでの説明では、メスの体重がオスに比べてやや重いため飛ぶには比較的高い体温が必要であり、気温が上がるまでメスの活動開始が遅れるとされて来た。しかし、本極ではメスの活動開始は二時間も遅れており、気温の変化だけではその遅れは説明できなかった。雌雄両方の行動を詳細に検討した結果、本極の雌雄間では日光浴の仕方に違いがあることが分かった。メスはオスに比べて低温の時に翅を閉じてしまって日光浴を行わないことが多く体温の上昇が遅くなるため、活動の開始も遅れるのだと考えられる。本種のメスは生涯で一回しか交尾をしないため、一度交尾をした後ではオスに求愛されても産卵などの行動の邪魔になるだけで利益は全くない。そのため、同種が接近して来たら見つからないように翅を閉じる。こうすると日光浴が中断し体温調節に悪影響が出てしまう。特に朝8時台から10時台にかけては他個体の接近によって日光浴をしている時間が顕著に減少していることが分かった。更に、他種の接近に対しても同種かどうか区別が付かずに反応して翅を閉じてしまうことが70%ほどの確率で見られた。他種の接近回数は同種の接近回数の4倍ほどもあるので、その体温調節への影響も甚大であると考えられた。
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