2004 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質を介した情報ネットワークの進化的安定性:群集構造との関わり
Project/Area Number |
04J00435
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 豊 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | SOSシグナル / 三者系 / 共進化 / 軍拡競争 / カオス / 群集構造 / 多様性 / 数理モデル |
Research Abstract |
化学物質を介した植物間の情報伝達の進化についての研究成果を釧路での日本生態学会で発表した。植物、植食性昆虫,捕食性昆虫の三者系における、化学情報物質を介した共進化の数理モデルを構築し、解析を行った。このモデルでは、植物と捕食者は、情報伝達を維持するように進化し、一方で、植食者は、そのような伝達をかく乱するように進化すると仮定した。結果として、捕食圧や、食害の際の被害の大きさ、等のパラメータの値が変わると、系は、安定な不動点、「赤の女王」的な軍拡競争、また、三者のカオス的な軍拡競争など、さまざまな振舞いを示すことが明らかになった。結果は日本数理生物学会で発表した。複雑な三者系群集において、植物が出す化学シグナルの多様性がどのような進化的メカニズムで維持されているかを説明するための数理モデルを構築し、解析を行った。このモデルでは、コンピュータプログラムによって三者系群集をランダムに発生させ、共進化をシミュレーションした。植物のシグナルは潜在的に多数の型を持ち得るとし、また、捕食者のシグナルに対する好みもまた対応する複数の型を持ち得るとした。植物は出来るだけ多くの捕食者を誘引するようにシグナルの型を進化的に変化させ、一方、捕食者は出来るだけ多くの餌種を発見できるように好みを進化的に変化させると仮定した。結果として、シグナルの多様性が維持されるためには、捕食者当たりの餌種の数が小さくなくてはならないことが分かった。また、構造が時間的に浮動するような食物網においては、そうでない食物網に比べると、極めて多様性の維持が困難であることが分かった。しかしながら、捕食者が、餌でない植食者から放出されるシグナルを嫌うと仮定すると、構造の変化する食物網においても、多様性の維持は可能であることが分かった。結果は大阪で行われた日本生態学会で発表した。
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