2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J01059
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 美里 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | チンパンジー / 対象操作 / 道具使用 / 認知発達 / 積木 / 物理的特性 |
Research Abstract |
チンパンジーがどのように物を扱うかを調べ、ヒトの認知発達の進化的基盤を探ることを目的に研究をおこなった。積木をつむ能力は、進化的にみてもヒトとチンパンジーなどの大型類人猿のみにみられるもので、手指の巧緻性とともに物を構成する認知的な能力が基盤となる。立方体の積木をつめるチンパンジー乳児3個体および成体3個体を対象に、形のことなる積木をつむ課題を実施した。チンパンジーが、形によって変わる積木の物理的な特性を理解しているのかを調べることを目的とした。最初に導入した円柱形の積木では、上にほかの積木をつめる向きが1種類、つめない向きが1種類ある。積木を効率よくつむためには、円柱積木の向きに着目し、つめない向きの積木は向きを直してからつむことが必要となる。初めて円柱積木をつむ課題を与えると、6個体中3個体が円柱積木の向きを直して効率的につむことができた。うち2個体は立方体の積木をつんだ経験の豊富な成体で、残る1個体は2歳7か月齢で自発的に積木をつみはじめた乳児だった。立方体の積木をつんだ経験の豊富さによって、円柱形の積木でも初めから向きを直してつめる個体がいることが示された。はじめはうまくつめなかった個体も、15セッション(75試行)をすぎると、円柱積木の向きを直して効率的につめるようになった。この結果を積木つみの発達過程とあわせて、英語論文として投稿した。円柱積木をつめる個体を対象に、三角柱の積木をつむ課題をおこなうと、すべての個体で向きを直して効率的につむ行動はみられなかった。しかし、経験をかさねると三角柱積木の向きを直してつむようになった。三角柱積木を効率的につむようになった個体に、積木の一面が傾斜している積木を与えると、3個体中2個体が初めから積木の向きをかえてつむことができた。チンパンジーが、積木の形とその物理的特性を学習できる可能性が示されたといえる。
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