2005 Fiscal Year Annual Research Report
視覚系の物体分節過程に関する心理物理学的および脳イメージング法による研究
Project/Area Number |
04J01062
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 青広 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 物体分節 / 物体認識 / 色 / メタコントラスト / fMRI / 心理物理 / 視覚野 / 腹側経路 |
Research Abstract |
目に映る物体が何であるかを認識するためには、その物体をそれ以外のものから切り分けること(物体分節)が重要である。本研究の目的は、この物体分節の脳内機構を解明することである。 本年度は、メタコントラストと呼ばれる知覚現象を利用して、色彩情報に基づく物体分節の脳内過程を調べた。メタコントラストとは、単独で呈示された場合にははっきり見える物体(ターゲット)が、その呈示直後、すぐそばに別の物体(マスク)が呈示されると見えなくなる現象である。この現象は、ターゲットを背景から切り分ける脳内過程が、マスク呈示によって妨害されることで生じると考えられている。 研究代表者らはまず心理実験を行い、二物体の色が同じ場合と異なる場合で先行物体の見え方を比べた。その結果、先行物体が見えなくなる現象は、両者の色が同じ場合にのみ生じることを明らかにした。次に、この物体分節が脳のどこで行われているかをfMRI(機能的磁気共鳴画像化法)を用いて調べた。その結果、ターゲットが見えなくなることに相関した脳活動の低下が、第一次視覚野を含む視覚皮質の広い範囲で観察された。興味深いことに、その活動低下の度合いは脳部位によって大きく異なった。物体の位置情報を処理しているとされる背側経路の視覚野では、活動低下は比較的小さく、視覚野間で差がみとめられなかった。これに対して、物体の色彩および形態情報を処理しているとされる腹側経路の視覚野では、高次のV8野で非常に大きな活動低下が見られ、低次のV2野とV3野ではそれに次ぐ大きさの活動低下が見られた。この結果は、色彩情報に基づく物体分節過程には、腹側経路の視覚野間のネットワークが深く関わっていることを示している。 以上の成果の一部は、本年度、専門の国際学会で口頭発表済みである。また、近く国際専門誌に投稿し公表する予定である。
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