2004 Fiscal Year Annual Research Report
単一高分子鎖の折り畳み構造相転移とそのダイナミクス
Project/Area Number |
04J01142
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
義永 那津人 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子物理学 / 非平衡統計物理学 / ソフトマター / 折り畳み相転移 / 力学特性 |
Research Abstract |
生体高分子の高次構造についての研究は,生体機能との関わりにおいてのみならず物理学的にも興味深い.特に,最近の直接観察法の発達により,揺らぎの大きな単一分子スケールの構造を議論することが可能になってきている.このような研究の中で,光ピンセットや原子間力顕微鏡を用いた高分子の引き伸ばしの実験が最近注目されている.この系では,高分子鎖を伸縮する際の張力を測定することで,力学応答や系になされた仕事を観測することができる.そのため非平衡系の物理学という視点からこの系を議論することは非常に興味深いものである. そこで本研究では,弾性を持つ単一セミフレキシブル高分子鎖の引き伸ばしのシミュレーションを行い,伸縮に伴う構造転移のダイナミクスとその時の力学応答を調べた.その結果,伸長,収縮過程での力学応答は凝縮部の構造に強く依存しており,伸張過程では,torous状の折り畳み構造から来るのこぎり型の力学応答(stick and release pattern)が,収縮過程ではrod状の折り畳み構造から来る張力一定状態(force plateau)が確認できた.これは最近のDNAを用いた実験でも観測されている現象である. また上記の結果は,セミフレキシブル高分子鎖において伸長過程と収縮過程が異なる構造変化の経路をたどっていることを示している。その結果,張力応答は伸縮のサイクルにおいて大きな履歴を示すことが明らかとなった。この履歴について詳細に調べることによって,セミフレキシブル高分子では,操作速度が凝縮転移にかかる時間スケールに比べて十分遅いのにもかかわらず履歴を示すことが分かった.また,弾性を持たないフレキシブル高分子では,履歴は,操作速度の減少に伴ってすみやかに消失していくことが明らかになった.
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Research Products
(1 results)