2005 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴ラマン分光法を用いたアレンオキサイド合成酵素の反応機構の解明
Project/Area Number |
04J02309
|
Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
當舎 武彦 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | アレンオキサイド合成酵素 / 共鳴ラマン / カタラーゼ / チトクロムP450 / アロマターゼ / 金属錯体 / 低温ラマン測定 / ヘム |
Research Abstract |
本年度は、珊瑚由来アレンオキサイド合成酵素(cAOS)の変異体を作成し、その構造機能評価を中心に研究を遂行した。cAOSは同じヘム酵素であるカタラーゼと類似したヘム近傍構造を持つものの、カタラーゼ活性を全く有さない。その理由を解明するために、cAOSとカタラーゼの結晶構造を比較したところ、ヘム近傍に存在するアミノ酸残基の一つが、cAOSではトレオニンであるのに対し、カタラーゼではバリンであった。そこで、cAOSのこのトレオニンをバリンに置換した変異体を作成し、その機能を調べた結果、cAOS変異体は野生型と異なりカタラーゼ活性を示した。さらに変異体の構造を共鳴ラマン測定から検討すると、cAOS変異体では、そのヘム近傍構造が野生型とは異なりカタラーゼに類似したものになっていた。以上の結果は、ヘム近傍に存在する一つのアミノ酸残基が、cAOSとカタラーゼの機能の相違を決定していることを示唆している。本研究結果は、既に国内外の学会での報告を通じ、高い評価をうけており、米国Vanderbilt大学でのデパートメントセミナーや分子研研究会での招待講演者に選ばれた。また、本結果は米国生化学会誌であるThe Journal of Biological Chemistry誌に掲載が決定されている。 上述の研究に並行して、昨年度からも着手しているチトクロムP450アロマターゼ(P450arom)の研究も引き続きおこなった。本年度は、P450aromの複雑な反応機構を理解するために、様々な構造をもつ基質やその誘導体存在下での共鳴ラマンスペクトルを測定した。その結果、P450aromは基質の構造に応じて、そのヘム近傍構造が柔軟に変化することを見出した。本結果に関しては、米国化学会誌であるBiochemistry誌に修正版を投稿中である。 また、酵素反応の中間体を測定するための低温ラマン測定も、金属錯体を用いたモデル化合物の研究を行っているグループと共同で実験を精力的に行った。その結果、ヘムだけではなく非ヘムや他の金属原子を活性中心に持つ、モデル化合物の反応中間体の測定に成功した。
|