2004 Fiscal Year Annual Research Report
超音速分子線による中性分子配向効果と衝突イオン化反応過程の立体異方性の研究
Project/Area Number |
04J03231
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀尾 琢哉 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ペニングイオン化 / 衝突エネルギー / 電子分光 / 超音速分子線 / 分子配向 / 古典トラジェクトリ計算 / 相互作用ポテンシャルの異方性 / 低温励起原子ビーム源 |
Research Abstract |
本研究ではまず、準安定励起原子により粒子間相互作用の立体異方性を観測できる衝突エネルギー/電子エネルギー二次元分光装置の装置改良を行った。具体的には実測の部分イオン化断面積の衝突エネルギー依存性(Collision Energy Dependence of Partial Ionization Cross Section : CEDPICS)および理論計算により、定量的な励起原子-標的分子間の相互作用ポテンシャルを求めるため、新たにノズル放電型の高強度低温励起原子ビーム源を製作した。ノズルには耐熱性が良く絶縁性材料であるで窒化ホウ素(BN)を用い、その周囲には熱伝導率の良い銅製のパイプを巻きつけた。そのパイプに液体窒素を循環させることで放電時に発生する熱を効率良く抑え、低速の励起原子ビームを生成することができた。これにより、観測可能な衝突エネルギー範囲を従来の70-350meVから20-350meVの広範囲に拡大することができた。アルゴン、窒素などの標準的試料の全イオン化断面積の衝突エネルギー依存性を測定し、既報の実験データと比較することで、本手法の実験データの信頼性を確認した。 さらに本研究では、上記のビーム源を用いて弱い相互作用系であるアセチレン-励起原子He^*(2^3S)系のCEDPICSを衝突エネルギー範囲20-350meVで測定し、水素原子近傍に弱い引力井戸が存在することを実験的に明らかにした。現在は古典トラジェクトリ計算をもとにした理論計算を用いて、実測CEDPICSを再現するような相互作用ポテンシャルの定量的な評価を行っている。また上記計画と並行して本装置の衝突エネルギー分解能を向上するため、単位スリット幅を狭くしたメカニカルチョッパー(準安定励起原子の速度選別用)を新たに製作した。以上の研究実績は、衝突イオン化過程における反応確立の空間的異方性(立体異方性)、および超音速分子線中における中性分子配向効果を明らかにしていくための実験手法の確立に寄与したものと考えられる。
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