2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J03428
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前田 理 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポテンシャルエネルギー曲面 / 化学反応経路 / 安定構造 / 遷移構造 / 超球面探索法 / グリシン |
Research Abstract |
化学反応のポテンシャルエネルギー曲面を探索し、安定構造及びそれらの異性化、合成反応経路を系統的に暴きだすことができる超球面探索法の開発を行った。本手法は、目的の化合物(安定構造)を出発点として、その安定構造に直接つながる反応経路を系統的に探索し追跡する。任意の安定構造を出発点として探索した解離反応経路は、その逆を辿れば、その安定構造に直接つながる合成反応経路となるため、副生成物の出ない効率的な合成反応経路を設計できる。 最も基本的なアミノ酸であるグリシン分子のポテンシャルエネルギー曲面に本手法を適用し、副生成物の出ない効率的な合成反応経路の探索を行った。その結果、二酸化炭素、アンモニア及びメチレン分子を原料とする合成経路及びホルムアルデヒド、一酸化炭素及びアンモニア分子を原料とする合成経路をそれぞれ見出した。ここで、前者の反応は活性化エネルギーを全く必要としないため、分子進化の過程において重要である可能性がある。 一方、反応物と生成物があらかじめ分かっている場合に、その間の遷移構造を求めることは反応速度の解析において非常に重要である。しかし、ポテンシャルエネルギー曲面における一次の鞍点に相当する遷移構造を求めることは難しく、その構造が化学的な直感によって予想できる場合でなければこれを見出すことは難しい。予想をいろいろと変えながら試行錯誤する探索は非効率であり、化学的な直感を全く必要としない自動的な探索手法の開発が求められてきた。上で述べた超球面探索法は、特定の反応物と生成物の間の遷移構造を求めることにも応用可能であり、そのためのプログラム開発と応用例の報告を行った。シアン化水素分子、水二量体及びアラニンジペプチド分子の異性化反応の遷移構造を求める問題に適用し、本手法によって化学的な直感を全く必要としない自動的な遷移構造探索が可能であることを示した。
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Research Products
(6 results)