2005 Fiscal Year Annual Research Report
量子場理論の存在論的問題の考察を通じた科学的認識の特質の探求
Project/Area Number |
04J04054
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡部 鉄兵 首都大学東京, 都市教養学部人文社会系, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 物理学の哲学 / 理論還元 / 量子論理 |
Research Abstract |
1.理論還元の概念を巡る議論について考察し,伝統的な構文論的定式化と近年注目されている意味論的定式化を比較検討した.具体例として,量子および古典統計力学の代数的構造を分析し,力学的記述と統計的記述の差異,有限自由度から無限自由度への理想化の存在を指摘し,これらが上位の熱的現象の記述と如何に結び付いているのかを論じた.この結果は,これまでに論じられてきた理論還元の概念がかなり素朴なものであり,典型例とされてきた統計力学-熱力学間においてさえ成立しないということを明らかにするものである.なお,この成果に関連して,第38回日本科学哲学会において『物理学における還元概念』という題目で口頭発表を行った. 2.論理学では近年,証明の動的意味論を確立するために,線型論理と量子論理の関係,線型論理とquantalesの関係,quantalesとC*-代数の関係が注目されている.他方で物理学では,量子力学と量子論理,C*-代数の結びつきは数学的・物理的側面においてよく知られており,両者の関連付けが期待される.そこで,これらの関係の数学的・物理的側面をさらに詳しく検討し,線型論理における各演算の静的・動的な働きの具体的な意味を明らかにする試みを行っている.
|