2006 Fiscal Year Annual Research Report
量子場理論の存在論的問題の考察を通じた科学的認識の特質の探求
Project/Area Number |
04J04054
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡部 鉄兵 首都大学東京, 都市教養学部 人文社会系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 物理学の哲学 / 理論還元 / 物理学と論理 |
Research Abstract |
1.理論還元に関する更なる考察を行い,伝統的な構文論的アプローチではほとんど扱うことが出来ないと看做されている「極限的還元関係」について,厳密なモデル論に基づいた意味論的アプローチから検討した.具体例として,量子的調和振動子のモデル構造を扱い,プランク定数を無限小の実数とする超準モデルから標準部分を取ることで得られる構造が古典力学のモデルのクラスに属するという小澤(1991)の結果を詳しく分析し,数学基礎論で知られている超準解析的手法を極限的還元関係の定式化へ応用する可能性とその科学哲学上の意義を検討した. 2.理論計算機科学の分野では,古典/直観主義論理体系とある種のプログラム言語(ラムダ計算)の間にCurry-Howard同型対応といわれる対応関係が知られている.またこのプログラム言語は計算のモデルとして古典的チューリング機械と同等である.後者は古典力学に従う物理的対象によって実現されると考えられるので,これらのことは,古典/直観主義論理における証明,ラムダ項(プログラム),古典力学的手続きの間に密接な関係があることを意味する.他方で近年,量子力学に従う物理的対象によって実現されると考えられている量子的チューリング機械なる計算モデルが提案され,古典的チューリング機械との差異が研究されているが,計算モデルとして前者と同等なプログラム言語はまだ知られていない.(もし存在するならば)そのようなプログラム言語とCurry-Howard同型対応するような論理体系は,いわゆる「量子論理」とは全く異なった,新しい「量子力学の論理」であると期待される.この推測に関する基礎的研究を行い,京都大学「哲学系若手研究者育成プロジェクト」研究会にて研究報告を行った.
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