Research Abstract |
自動車の排ガス浄化触媒として,またドラッグ・デリバリー・システムといった医療の分野においても,粒径が制御されたナノ粒子が必要とされており,現在様々な側面から研究・開発が精力的に進められている.しかし特に金属・非金属からなる化合物のナノ粒子創製の素過程および機構が未解明であり,目的とする粒径や組成,物質機能の制御性が依然として低い.特にシリサイドナノ粒子の創製は蒸気圧の異なる物質の共凝縮過程を伴うため,極めて困難なプロセスであるが,本研究では高エンタルピーを有し,かつ急冷速度が大きいことで,原料の瞬間的蒸発および核生成が同時に行える熱プラズマ流を利用した創製プロセスに着目した。 プラズマ流の熱流動場がナノ粒子の生成に与える影響を明らかにするため,プラズマ流を流体力学・熱力学・伝熱学・電磁気学の立揚から定式化した.さらにシリサイドナノ粒子の核生成および共凝縮過程をモデル化し,プラズマ流の解析から得られる情報と融合して解くことで,材料の違いによる創製機構の違いを明らかにした. プラズマ流中の高温部分は9,000K以上に及び,原料の蒸発を容易に行える裏付けを得た.またプラズマ流の下流部では10^5K/sに及ぶ急冷率が得られ,ナノ粒子の核生成を促進することが示唆された.モリブデンとケイ素の混合系の場合,モリブデンが先に核生成し,下流部でケイ素が凝縮することでナノ粒子が成長するが,コバルトとケイ素,クロムとケイ素の混合系の場合には逆の挙動を示す.またチタンとケイ素の混合系の場合,ケイ素の核が生成した直後に両物質が同時に凝縮するため量論組成に極めて近いナノ粒子が創製される. 実験的研究結果との比較を行った結果,粒径分布や組成の一致が得られたことから,機構の測定が極めて困難なプラズマ流によるシリサイドナノ粒子創製システムのモデル化に成功し,創製機構を明らかにすることができたといえる.
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