Research Abstract |
本研究は,高周波散乱問題における高精度・高効率なけ計算法の確立を目指す.一般的な散乱解析法として,数値的に境界条件を解くモーメント法などの数値解析法と,高周波特有の近似を使った高周波近似解法がある.前者は高い精度を有するが計算コストが高く大規模問題への適用が問題であり,後者は精度では劣るが計算コストの面での利点を持つ. 本研究では,後者の高周波近似解法に着目する.高周波近似解法の一つである物理光学近似は,GTDやPTDなどの他の高周波近似解法に比べ,精度において劣るが,簡易な計算アルゴリズムから工学的に汎用とされ,その使用頻度は高い. 目的として,P0の汎用性を損なわない手順で,P0の誤差改良を試みた.P0は,散乱体上の誘起電流を,規範問題である無限平板上の誘起電流を用いて近似する計算法である.P0の誤差要因として,無限平面上の誘起電流を使うため,端部や角,曲面などの非平面部における摂動電流の無視に起因する.この修正法としてPTDが有名であるが,GTDのような回折理論が必要である. 本研究での誤差補正の方針は,散乱体表面を反射の法則を満足するように表面の法線ベクトルを修正した仮想的な表面で代用するだけであり,他に従来のP0と同じであり,汎用性は損なわれない. 提案した手法の有効性を解析的,数値的に検証した.提案した手法に漸近近似を適用し,回折家数のレベルでGTDとなることを示した.また,2次元ストリップや三次元の円板散乱体の問題において,GTDと比較し,端部の摂動電流の無視に対する誤差の改良効果を,二次元のコーナーおよびパラボラ状態乱体において,モーメント法と比較して,非平面における摂動電量の無視による誤差の改良効果を数値的に示した. 提案手法は,高周波近似解法の利点である数値解析法に比べ格段に軽量な計算コストを持つだけでなく,GTDのような回折理論の知識を必要とせずともGTDレベルの精度を有し,光線理論特有の幾何光学境界や焦点などにおける特異点の問題もないという利点を持つ.
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