2004 Fiscal Year Annual Research Report
線虫MAPKホスファターゼの分子遺伝学的解析によるストレス応答情報伝達機構の解明
Project/Area Number |
04J05637
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水野 智亮 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員-PD
|
Keywords | MAPキナーゼ / MAPKホスファターゼ / JNK / 重金属ストレス / 線虫 |
Research Abstract |
MAPキナーゼ(MAPK)経路は、MAPK、MAPKキナーゼ(MAPKK)、MAPKKキナーゼ(MAPKKK)という三種類のキナーゼによって構成される。この経路は、様々な環境の変化によって活性化され、細胞の増殖・分化やアポトーシスなど多様な生命現象を引き起こす。MAPKの活性は、そのリン酸化状態によって変化する。MAPKは、MAPKKによってリン酸化されると活性化するのに対して、MAPKホスファターゼ(MKP)によって脱リン酸化されると不活性化する。したがって、MKPはMAPKの活性の調節において不可欠な因子である。しかしながら、多細胞生物におけるMKPの生理学的な機能については不明な点が多い。そこで、私たちは、線虫MKPをコードするvhp-1遺伝子の機能解析を行った。まず、vhp-1遺伝子の生理学的機能を解析するため、vhp-1欠失変異体を分離した。その結果、vhp-1欠失変異体は幼虫期において発生を停止することが明らかになった。次に、VHP-1が制御するMAPK経路を明らかにするため、遺伝学的解析を行った。その結果、vhp-1変異表現型はJNK様MAPKをコードするkgb-1、MKK7型MAPKKをコードするmek-1、MLK型MAPKKKをコードするmlk-1それぞれの機能欠損変異によって抑圧された。このことから、KGB-1、MEK-1、MLK-1がMAPK経路を構成しており、VHP-1はこの経路の不活性化に機能していることが明らかになった。また、KGB-1MAPK経路構成因子の欠失変異体は重金属に対して高い感受性を示した。これらの結果から、KGB-1MAPK経路によって制御されるストレス応答の統合および調節において、VHP-1が中心的な役割を果たしていると考えられた。
|