2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J06807
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺本 寛 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 芳香族ニロロ化合物 / 白色腐朽菌 / シトクロームP450 / ニトロレダクターゼ / プロテオーム解析 / 中国遺棄化学兵器 |
Research Abstract |
我々は本年度、担子菌による芳香族ニトロ化合物代謝機構の徹底解明、代謝反応を触媒する酵素系の解明を主な目標として研究を進めてきた。代謝実験の結果より、白色腐朽菌Phanerochaete. chrysosporiumの芳香族ニトロ化合物に対する代謝応答機構を俯瞰すると、ニトロ置換基の数により初発の反応が異なることがわかった。TNT、ピクリン酸等ニトロ基が多数置換している化合物ではニトロ基の還元が引き起こされる。一方、低置換化合物(4-nitrophenol;4-NP,4-nitrotoluene;4-NT)ではP450により水酸化を受けた(発表論文)。しかし、基質の構造により芳香環の直接水酸化反応とアルキル側鎖の水酸化を使い分けている様も観察された。最終的に、P. chrysosporiumは還元や水酸化により芳香環のイオン化ポテンシャルを低減させることで、巧みに代謝分解を行う機構が推定された。 さらに、種々の芳香族ニトロ化合物添加に対するP. chrysosporiumの細胞応答機構の解析を行った。 特に、二次元電気泳動法を用いたプロテオームディファレンシャルディスプレイ法により、代謝関連酵素の探索ならびに細胞応答機構の検討を行った。その際、担子菌による代謝経路が解明されている2,4-dinitrotoluene(2,4-DNT)、4-NT、4-NPを基質として用いた。その結果、2,4-DNT添加に対して誘導されるタンパク質が数多く存在した。特に、lipoamide dehydrogenaseやthioredoxin reductaseはニトロレダクターゼ活性を有することが知られていることから、2,4-DNT還元への関与が示唆された。本研究の主なターゲット基質であるピクリン酸の還元を触媒するか否かについても興味が持たれる結果となった。今後詳細に検討を行う予定である。さらに、解糖系、ペントースリン酸回路、TCA回路、抗酸化に関わる酵素および熱ショックタンパク質などが誘導された。4-NTや4-NPに対しても、代謝反応を行うと予測されるタンパク質が同定された。興味深いことに、P. chrysosporiumは各基質添加に対して異なるタンパク質発現パターンを示した。すなわち、本菌は置換基の種類や数を識別して各化合物に対して異なる代謝システムを提供していると考えられた。
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