2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J07506
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松原 康介 慶應義塾大学, 大学院・政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1) (00548084)
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Keywords | 現代イスラーム都市 / 多元的成り立ち / モロッコ / フェス / 街路線 / 保全再生 / 住むための遺産 / 公私の分離 |
Research Abstract |
今年度研究実績は、「現代イスラーム都市の多元的成り立ち」について、モロッコの旧都フェスを事例として、特に旧市街において20世紀に進展した多元化の課題と展望をまとめた。具体的には、多元化の萌芽的事例として1960年代の旧市街内暗渠道路ルセーフ道路の建設、また、多元化の現在を展望する事例として国際協力による「フェス保全計画」の再生を取り上げ、制度的・空間的な特質から考察した。 ルセーフ道路は、新市街において運用実績のあった、フランス保護領時代に起源を持つ街路線制度(arrete d' alignement)により実現された。西欧型都市である新市街の形成ツールを、歴史的な構成原理を持つ旧市街に適用したという意味で、旧市街の多元化の重要な局面である。計画図からは、道路・広場・公園を一体的に形成する意図が明らかであるが、道路用地確保の手段であった収用は個々の地所単位となり、不規則な街路線となった。沿道ファサードは従前の土地利用状況により多様で、利用状況も異なるが、表と裏の入れ替わりが全体的な趨勢といえる。一方、安易な近代型道路の導入が歴史的環境を破壊する様相も確認された。旧市街の歴史的な存続形態や空間構成と、近代的な空間形成のツールとしての街路線の、重なりと相互作用の結果である。 更に、「フェス保全計画」における新道路の建設事業、歴史的建築の再生事業、一般住宅の改修、民間による店舗転用といった現行政策の方針と、空間形成の趨勢を実態的に把握し、その多元的特質を生かした将来像を提案した。「住むための遺産」の整備指針として、袋小路は道路には原則接続させない、接続させる場合は綿密な宅地計画を練るなど、歴史的街路網との兼ね合いを考えたプラン作りや、制度的支援等が考えられる。いずれも20世紀の急激な変化を踏まえた上での、旧市街独自の秩序原理「公私の分離」の再現として発展させることが望ましい。
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