2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J07506
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松原 康介 慶應義塾大学, 大学院・政策・メディア研究科, 特別研究員(PD) (00548084)
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Keywords | 現代イスラーム都市 / モロッコ / フェス / 旧市街 / 新市街 / 郊外地 / CIAMモロッコ / ハブス事業 |
Research Abstract |
本年度の研究は、現代イスラーム都市の多元的成り立ちの中でも、モロッコ・フェスを対象に、旧市街(歴史都市)、新市街(仏植民都市)に続いて形成された、郊外地の実態解明を中心に実施した。その成果は本年度の都市計画学会論文集2本及び、代表者の博士論文としてまとめられた。 モロッコの郊外地とは、コルビュジエ理論に影響を受けたCIAMモロッコのメンバーが中心となって、旧市街の空間構成や利用の仕方を研究し、これを住宅難に対応する量産型住宅地として供給しようとしたもので、いわばイスラーム都市の人為的計画といえる。郊外地は離村農民の都市流入が最も激しかったカサブランカを中心に計画・実現され、中庭形式や平屋建て、あるいは袋小路によるアクセスといった歴史的住宅の要素が簡略化されながらも継承された空間に特徴がある。 フェスの郊外地アイン・カドゥスは、1940年代末期にCIAMモロッコのリーダー、M.エコシャールが道路や区画といった基本的計画を構想したものの、エコシャールの解任や内戦等の影響によって計画は中途のまま挫折した。独立後には離村農民の流入が一層激化し、住民自身による寄付と増改築の住環境づくりが進展する。すなわち、モスクや浴場といった公的施設は住民の寄付によって形成される一方、住宅では中庭の閉鎖・居室化や上階の建て増しといった拙速な都市発展が続いた。郊外地は今日でも都市問題の温床となっている。 一方、郊外地の建設事業において特筆すべき点は、ハブスと呼ばれるモロッコ独特の慈善事業の仕組みを近代化した上で再現したことである。すなわち、宗教施設は富裕者の寄進を得て建設されると同時に、必ず付設店舗が設けられ、それら店舗からの売り上げの一部がモスクの維持管理に回されるという仕組みを設計段階で組み込んだのである。これは保護領初期にハブス事業として開始され、今日でも基本的な施設形成の手法となっている。 本年度、代表者はDC2として博士論文「近代都市計画の導入からみた歴史都市フェスの都市保全」を執筆した(平成17年度日本都市計画学会学会賞・論文奨励賞を受賞)。これに伴い本研究は名実ともにPD研究へと移行し、他都市を対象にした応用研究の段階に入る。
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