2004 Fiscal Year Annual Research Report
11・12世紀フランスにおける文書史料の機能:カルチュレール編纂作業を手がかりに
Project/Area Number |
04J07900
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松尾 佳代子 大阪大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 記憶の管理 / 文書史料 / 記述文化 / カルチュレール / 中世フランス |
Research Abstract |
11・12世紀における文書史料の機能の解明を目的とする本研究では、11世紀後半からみられた修道院カルチュレール編纂の活発化に着目して、サン・シプリアン修道院のカルチュレールの構造や編纂の社会的背景の分析を行った。今年度の研究成果は以下に概記する。 1.修道院カルチュレールについて、従来は財産管理・保全という実務的機能ばかりが強調されてきた。これに対して近年は、「記憶の管理」という観点から、実務系史料についても編纂の意図が議論されるようになっている。そこで、このような史料の典型として修道院カルチュレールを分析し、「記憶の選択・操作」と財産管理・保全という機能との関係を考察することで、修道院カルチュレールの機能を明らかにすることを考察の焦点とした。史料批判が不完全であったため、コディコロジックな史料分析や文書形式学的な史料分析からとりかかり、作成年代や内部構成など、サン・シプリアン修道院のカルチュレールの基本的な性格を明らかにした。ついで、収録証書のテクスト分析により、免属特権と修道院縁起を強調する「記憶の選択・操作」を、このカルチュレールの特徴として指摘した。なお、この研究成果の一部を、「カルチュレール編纂にみる11・12世紀の文書使用-サン・シプリアン修道院の場合-」と題し、広島史学会大会(2004年10月30日)において発表した。 2.カルチュレール研究が日本ではほとんど知られていないので、積極的に研究会発表や論文執筆を行い、フランスでのカルチュレール研究の動向の紹介に努めた(「カルチュレールを読む」『史林』88巻2号掲載決定)。 3.昨年12月にフランスへ赴き、パリ大学のL.モレル教授、ボルドー大学のF.レネ教授に研究報告を行い、指導を受けた。サン・シプリアン修道院の史料状況を把握する必要から、フランス国立図書館で関係するマニュスクリを網羅的に調査し、修道院史に関する史料を入手した。
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