2004 Fiscal Year Annual Research Report
強磁場・極低温非接触原子間力顕微鏡を用いた交換相互作用力の原子レベルでの画像化
Project/Area Number |
04J08028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 宜昭 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 非接触原子間力顕微鏡 / 表面 |
Research Abstract |
表面や界面の磁性が活発に研究されるようになり、スピン電子顕微鏡や磁気共鳴力顕微鏡(MRFM)など、多くの手法および装置が開発されてきた。しかしながら、原子レベルでは未解明なことが多く、将来的な磁性材料の研究を行うためには、表面上の個々のスピンを分解し、それらが作り出す表面構造の測定が可能な新しい表面磁性の測定手法が望まれている。そこで、本研究では非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)を応用し、強磁場環境下において原子分解能を有する表面観察が可能な顕微鏡の開発を行うことを目的とする。 本研究で開発した装置は、AFMユニットを含む観測室、探針・試料の搬送方向を変える転換室、試料の清浄表面作成を行う処理室、探針・試料の交換を行うロードロック室から成る。AFMカンチレバの変位検出には光干渉方式を採用した。観測室は超伝導磁石を内蔵したクライオスタットへ導入され、VTI (Variable Temperature Insert)を稼動させて低温(3[K]以上)、超伝導磁石を用いて磁場環境(0〜10[T])を作る仕様である。除振は、2段のアクティブ除振台にクライオスタットを載せることにより行った。 低温環境下でのNC-AFMでの原子分解能観察を行うために、AFMユニットの除振性能および冷却性能を評価した。除振性能については、加速度計および走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて評価を行った。加速度計では2段のアクティブ除振の効果を確認することができたが、STMでは確認できなかった。また、STMで磁場・低温環境下でのSi(111)7×7再構成表面の原子分解能観察を達成できたものの、NC-AFMでの原子分解能観察に必要な装置剛性が得られていないことを確認した。そこで、装置全体の補強、配線の除振処理などを行った。冷却性能に関しては、まず開発した段階でのAFMユニットの冷却を行い、最終到達温度が25[K]までにしか達しないことを確認した。予備実験の結果、低温部とAFMユニットの接触面積が小さいことがわかり、観測室底部の改良により最終到達温度を15[K]にまで下げることができた。除振および低温システムの改善により、低温(78[K])環境下で原子分解能を有するNC-AFM像を安定して得ることができた。
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